研究領域 | 発動分子科学:エネルギー変換が拓く自律的機能の設計 |
研究課題/領域番号 |
19H05390
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小池 亮太郎 名古屋大学, 情報学研究科, 助教 (20381577)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 構造バイオインフォマティクス / データベース解析 / 構造機能相関 |
研究実績の概要 |
ATPアーゼはATPの加水分解から得られるエネルギーを利用し,さまざまな仕事を行う蛋白質で,生体発動分子の好例である.加水分解反応の中核を担うのが活性部位であり,その形状(構造)はエネルギー伝搬の結果生じる分子機能(仕事)と関連しているはずである. ATPアーゼの活性部位の構造を網羅的に調べ,分子機能との関係を解析する.どのような構造の活性部位が,どういう仕事を生むのか,原因と結果の因果関係をつきとめる. そのために,まず公共の蛋白質データベースを利用し,データ収集を行った.活性部位の構造データが利用可能であり,かつその構造データが高精度であるものに限定したところ, 100種以上のATPアーゼの構造データを取得できた.これらのATPアーゼには,分子モーター活性を持つもの,ATP合成を行えるもの,DNAの異性化を行うもの,などが含まれていた.分子機能の観点から多様なATPアーゼを含むデータセットを構築できた. また,収集したATPアーゼの活性部位の構造に関して調査を行った.活性部位の構造を網羅的に解析するために,構造比較を行うためのプログラムを作成した.このプログラムを用い,活性部位の中でもATPの加水分解反応の中心となる,ATPの末端にあるリン酸基(γリン酸)と,その周辺原子の構造を網羅的に比較した.その結果,進化的に類縁なATPアーゼの構造が類似することが確認できた.自明な構造類似性を検出できたことから,作成したプログラムがうまく稼働していることが確認できた. 収集したATPアーゼのデータを格納するデータベースの開発も行った.Webを通してデータにアクセスするインターフェース,簡単な検索機能,ATPアーゼの構造を画面上で操作できるビューワー機能,などを実装した.また,収集したデータの登録も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では,ATPアーゼの活性部位の構造を網羅的に調べ上げ,分子機能との関係を解析し,原因と結果の因果関係をつきとめることを目的とする.そのため,次の3つの作業工程で研究を進める.(1)公共のデータベースを利用し,構造・機能の情報が利用可能なATPアーゼのデータを収集する.(2)集めたATPアーゼの活性部位を立体構造比較し,分類する.(3)分類結果に基づき,構造と機能との関連を調査する.初年度は(1)と(2)を行い,進行にあわせてデータベース化の作業を行う計画を立てた. 研究実績の概要で述べたように,100種以上のATPアーゼのデータを収集,構造比較プログラムの作成, ATPアーゼの活性部位の網羅的な構造比較,データベースの実装,データの登録,は実行されている.そのため,「おおむね順調に進展している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,ATPアーゼの活性部位構造と機能との関連を調査する.そのため,ATPアーゼの機能に関する情報の収集を行う.公共の蛋白質データベースを利用し,ATPアーゼにつけられた注釈情報を収集し,機能的な意味での分類を行う.また,加水分解の反応速度などのデータもATPアーゼの機能情報として収集を試みる. 活性部位の構造を調べるさい,これまではγリン酸の周辺原子をひとまとめにして調査をおこなってきた.本年度はさらに,各要素に分割し,γリン酸の最近接水分子や金属イオンなど,個別の要素にも着目し,構造の比較・分類を行う.各要素の中で機能との関連をよく説明するものはどの要素か調査を行う.
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