研究領域 | 発動分子科学:エネルギー変換が拓く自律的機能の設計 |
研究課題/領域番号 |
19H05391
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 建児 京都大学, 工学研究科, 教授 (80262145)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フォトクロミズム / 下限臨界溶液温度 / 超分子構造体 / 枯渇力 / 発動分子システム |
研究実績の概要 |
今年度は、両親媒性ジアリールエテンの混合物が示す光誘起集合体構造変化について検討した。オクチルオキシカルボニル基とN-オクチルカルバモイル基をもつ2種類の両親媒性ジアリールエテンの1:1混合物からなる超分子集合体は、紫外光照射とその後の暗所放置により、混合前の純粋な化合物とは異なり、青い球体と赤紫の広がった構造体に分離された。この変化は繰り返し行うことができた。可視光を照射すると、青色の球体と広がった構造体の両方が無色の球体に変化した。分割された無色の球体は、再び紫外光と可視光照射に対して同じ応答を示した。そのことから、分離されたそれぞれの集合体中における2種類のジアリールエテンの混合比は変化していないことが示唆された。吸収スペクトルの温度依存性を測定し得られた相図によると、光誘起集合体構造変化はLCST転移に由来すると考えられる。1:1の混合物では、純粋な化合物とは異なり、閉環体分率が約50%の領域でLCST転移温度が急激に変化した。 閉環体分率の高い1:1混合物のTEM測定によると、数十ナノメートルサイズのネットワークが形成されていることが示された。相図とTEM像から判断すると、青い球体と赤紫の広がった構造体への分離は、閉環体分率が高い領域での局所相転移として理解される。このユニークな光誘起集合体構造変化は、光エネルギーを直接運動エネルギーに変換するような、光駆動の発動分子の設計の指針を与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、両親媒性ジアリールエテンの混合物が示す光誘起集合体構造変化について検討した。オクチルオキシカルボニル基とN-オクチルカルバモイル基をもつ2種類の両親媒性ジアリールエテンの1:1混合物からなる超分子集合体が、紫外光照射とその後の暗所放置により、混合前の純粋な化合物とは異なり、青い球体と赤紫の広がった構造体に分離されるというユニークな構造変化を報告できた。おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、エラストマー化を行うことにより、可逆な2状態ピストン運動を目指す。フォトクロミズムの2状態で異なる集合形態をとるような系を探索し、さらに、開環体と閉環体の双方が枯渇力によって階層的に巨視的集合を示すようなシステムを探索する。このようなシステムに対して、超分子集合体が作る相と溶媒相の境界を明確化するために、集合体をエラストマー化し、目的の2状態ピストン運動を目指す。2状態で可逆な形態変化を示し、溶媒相との境界が明確な集合体が構築できた暁には、一端を固定して異なる波長の光の交互照射による2状態ピストン運動の実現を目指す。
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