研究領域 | 発動分子科学:エネルギー変換が拓く自律的機能の設計 |
研究課題/領域番号 |
19H05404
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
曽和 義幸 法政大学, 生命科学部, 准教授 (10519440)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 分子モーター / べん毛 |
研究実績の概要 |
本研究の対象である細菌べん毛モーターは,細菌の表層から突き出ている螺旋状のべん毛繊維をスクリューのように回転させて細菌遊泳の原動力を生み出す発動分子である.このモーターのエネルギー源は細胞膜を通過するイオンの流れであり,固定子MotA/B複合体の細胞質ドメインと回転子リングを構成するFliGタンパク質が相互作用して回転トルクを生み出す.本研究では,モーター回転を生み出す構造-機能相関のアミノ酸残基レベルでの可視化を大きな目的として,光架橋技術を用いる系の構築をおこなった.まず,紫外光(365 nm)を回転計測システムに導入するための光学系を顕微鏡に組み込むことで,モーター回転を高速に記録しながら,モーターに紫外光の照射をすることができた.また,モーターの特定のアミノ酸残基に光架橋を引き起こす非天然アミノ酸を導入することと,一般的な生化学実験によって光架橋が起こることを確認した.さらに,非天然アミノ酸を回転子FliGタンパク質の特に回転トルク発生に重要と考えられる部位に導入したモーターが,回転トルクの発生が可能であることを顕微鏡下で確認した.つぎに,紫外光を様々な光強度や照射時間で回転するモーターに照射して分子間に架橋を形成させる条件を検討した.その結果,モーターが紫外光照射後に停止する様子が観察され,その停止する割合と生化学で検出した光架橋産物との相関を見ることによって,分子間相互作用の強度を推定することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で目的とした顕微鏡下における光架橋の系を構築することができた.さらに,固定子-回転子間の相互作用に重要であろうと考えられる残基について,光架橋による回転阻害を観察できた.この系を用いて網羅的に実験をおこなうことで,固定子-回転子間相互作用の強度マップを作成できると期待できる点で大きな進展があったと言える.ただし,年度末は実験ができる環境に制限があったため,総合的に評価して「おおむね順調に進展している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に構築した系を用いて,固定子-回転子間に存在すると考えられる残基に網羅的に光架橋をかけて,回転運動と比較して相互作用マップを作成する.
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