研究領域 | シンギュラリティ生物学 |
研究課題/領域番号 |
19H05412
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
園下 将大 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (80511857)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膵臓がん |
研究実績の概要 |
がんは現在日本における死因の第1位で、診断法や治療法の確立が喫緊の課題である。特に膵臓がんは、がんの中でも最も悪性度の高いものの一つだが、高い治療抵抗性を示すことが知られている。治療薬の創出は極めて難航しており、研究手法および創薬手法の抜本的な変革が求められている。そこで本研究は、「がん細胞の一部が"がん促進シンギュラリティ細胞"として膵臓がん形成の促進や薬物抵抗性の発現に寄与する」という新たなパラダイムを提唱し、これを検証する。応募者は培養ヒト細胞やマウス、ショウジョウバエの実験系、キナーゼの生化学的・遺伝学的・薬理学的解析の十分な実績があり、本研究ではこれらの研究基盤を最新鋭統合解析システムAMATERASと組み合わせる異分野融合を推進し、がん発生機序研究および治療法開発の新たな方法論と技術的基盤を創出する。これにより最先端の方法論・成果を世間に積極的に発信し、次世代型生命現象研究を創出する。 本年度は、ヒト膵臓がんで観察される遺伝子型のうち3種類を模倣したショウジョウバエを作出することに成功した。これらのハエの解析により、遺伝子変異の蓄積が細胞増殖や運動を促進することを発見した。さらに、それらを用いて遺伝学解析を実施することにより、がん形質の発現に関与するキナーゼを複数個同定することに成功した。また、ヒト膵臓がん細胞の培養系やそれらを移植した膵がんマウスモデルの樹立も計画通り進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルハエの作出や哺乳類実験系の樹立は概ね計画通り進行中である。一部のハエの作出に技術的な困難が発生したため、引き続き解決に努める。既に作出したモデルハエを活用してがん形質を変化させる遺伝子や化合物の候補を既に同定しており、今後は哺乳類モデルにおける確認も進める。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き膵がんモデルハエの作成を実施し、形質転換細胞の生存・増殖・運動能を解析する。そしてこのモデルを使用してキナーゼ阻害薬を投与し、悪性表現型を抑制する薬物を同定する。この結果に基づき、がん促進シンギュラリティ細胞 (Cancer-promoting singularity cells; CPSCs)の機能発現に必要なキナーゼ(CPSC-kinase; CPSC-K)を同定しつつ、個体内でCPSC-Kが機能する場所やシグナルネットワークを特 定する。最後に、これらの結果をヒト膵臓がんオルガノイド細胞を移植した免疫不全マウスで確認する。
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