公募研究
重度熱傷などへの再生医療に用いられている培養ヒト表皮幹細胞は、自己複製を繰り返しながら、幹細胞コロニーを形成する。しかしながら、突如として幹細胞コロニー内に自己複製能を消失した異質な細胞が生まれる。このような異質細胞が出現した幹細胞コロニーでは、連鎖的に他の多くの幹細胞が分裂停止し、分化した分裂停止コロニーへと形質転換する。すなわち、均一な幹細胞集団内に生まれた一つの異質な細胞=シンギュラリティ細胞が、幹細胞集団そのものを消失させる。この異質細胞の出現は、再生医療の大きなリスクとなっている。異質細胞出現の機構は不明であるが、申請者らの研究から、異質細胞は細胞運動能が低下していることが明らかとなっている。本研究では、ヒト表皮幹細胞コロニーに突如現れる異質細胞を、非侵襲的に細胞運動速度の変化から検出する手法を開発し、異質細胞の出現時の環境を明らかにすることで、異質細胞出現機構を解明し、またヒト表皮幹細胞培養の品質管理法として応用することを目指す。具体的には、位相差顕微鏡画像から、機械学習よって幹細胞コロニーから個々の細胞を自動認識するシステムを構築し、その時系列画像から状態空間モデルを用いた物体追跡によって、幹細胞コロニー内の個々の細胞の軌跡を明らかにする。また、本手法の再生医療応用への汎用性を示すため、ヒトiPS細胞でも同様の手法でコロニー内の個々の細胞の自動認識および追跡を行う。本年度は、ヒト表皮幹細胞コロニーの位相差顕微鏡画像から、自動的に細胞を検出しトラッキングする手法を開発することに成功した。また、トラッキングによる細胞速度解析から、培養条件の変化を見出すこと、さらには、幹細胞コロニーの長期的な増殖能力と相関する運動パターンパラメータを同定することができた。
2: おおむね順調に進展している
予定どおり、ヒト表皮幹細胞コロニーの位相差顕微鏡画像から、自動的に細胞を検出しトラッキングする手法を開発することが出来た。また、トラッキングによる細胞速度を利用して、幹細胞コロニーの培養状態変化や増殖性を予測する手法を開発できた。
ヒト表皮幹細胞コロニーの長期連続観察から、著しく速度の異なるシンギュラリティ細胞を検出する。また、ヒトiPS細胞でも、同様の手法を開発する。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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