研究領域 | シンギュラリティ生物学 |
研究課題/領域番号 |
19H05423
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
加藤 泰彦 大阪大学, 工学研究科, 講師 (60415932)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シンギュラリティ細胞 / オーガナイザー / オス化 / 転写因子 / オオミジンコ / ダブルセックス / ヴリル |
研究実績の概要 |
環境に応答したミジンコの性決定におけるシンギュラリティ現象「オス特異的転写因子Dsx1によるオーガナイザーのオス化」を制御する転写因子のイメージングを行うことを目的とした。 1)初期胚における転写因子動態イメージングのためのプラットフォームの開発 初期胚における転写因子の動態解析では遺伝子発現と蛍光観察の間のタイムラグがボトルネックであったが、近年この問題を解消できるLlamaTagを用いたライブイメージング法が開発された。本方法では、発生過程で転写因子が発現する前に卵内にGFPを蓄積させておく必要がある。今年度は、卵への輸送シグナルを付加したss::eGFP(signal-sequence tagged eGFP)を発現するプラスミドをノックインし、GFPを卵に蓄積する組換え体を樹立することに成功した。 2)転写因子Vrille、Dsx1発現を同時に可視化できる組換え体の作出 Vrilleは初期胚におけるDsx1遺伝子の活性化因子である。1)のアプローチと平行して、緑色蛍光タンパク質mClover3が融合したVrilleを発現する遺伝子組換え個体の作出を試みた。VrilleとDsx1発現を同時観察できるように、既に樹立されていたDsx1発現をmCherryにより可視化できる組換え体(Dsx1レポーター系統)を宿主として用いた。Dsx1レポーター系統はmCherry以外に全身でH2B-GFPを発現することからまずH2B-GFP遺伝子のノックアウトを行ない、得られた系統を用いてVrille ORFの3’側にmClover3がノックインされた遺伝子組換え個体を樹立することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転写因子の動態を可視化するための基盤となる遺伝子組換え体を作出できたことに加えて、シンギュラリティ現象を制御している可能性がある転写因子Vrille とmClover3の融合タンパク質を発現する組換え体の作出にも成功した。このように、シンギュラリティ現象を制御する細胞集団を明らかにするために必須の組換え体を作出できたことから概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた遺伝子組換え体を用いて研究を展開する。GFPを卵に蓄積する系統においてVrilleをはじめとするシンギュラリティ細胞で発現していると予想される転写因子群にLlamatagを付加することで、各転写因子の動態を明らかにする。またmClover3を融合したVrilleを発現する組換え体の胚を観察することで、Vrille発現細胞とシンギュラリティ現象との関係性を調べる。一方で、胚発生過程で遺伝子発現を細胞レベルで時空間的に制御する手法を確立し、これを用いて転写因子の発現に摂動を与えることで、シンギュラリティ細胞の同定を行う。
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