公募研究
組織中で希少細胞として存在すると考えられるシンギュラリティ細胞を同定し、計測するうえで重要なのは、特定の細胞が次にどのような運命をたどるのかを単一細胞レベルで「予測」することである。将来の転写の遺伝子発現の予測は、転写活性化あるいは抑制を誘導するヒストン修飾や転写因子、さらに転写状態を反映する活性化RNAポリメラーゼの結合状態をクロマチン免疫沈降法(ChIP)によりゲノムワイドに評価する(ChIP-seq)ことで理論的には十分可能であることが示されている。そこで、我々が最近開発した単一細胞レベルのエピゲノム解析手法であるChILseqとmRNA-seqを同一細胞内で行うscChILA-seq (single cell ChIL+RNA-seq)の開発を行い、骨格筋幹細胞中に存在するシンギュラリティ細胞の同定を目指す。これまでに免疫染色法をベースとして細胞を非破壊的に任意の抗体が反応した周囲のゲノム上のDNA配列を同定する技術としてChIL-seq法を開発した。先行研究としてATAC-seqとRNA-seqを同時取得するscCAR-seqが報告されている。scCAR-seqで採用されているin cell reverse-transcription後にChILを行うことでChILA-seqが可能か条件検討を行った。1000細胞で活性型ヒストン修飾マーカーであるH3K4me3に対するChILA-seqを行ったところ、骨格筋芽細胞C2C12の未分化細胞と分化細胞(分化誘導後72時間)のChILA-seqデータをIGVで可視化したところ、分化細胞でMyog遺伝子(骨格筋遺伝子: SKM gene)の転写(3’RNA-seq)とH3K4me3の上昇が確認された。また、両細胞で発現が高いActb遺伝子と発現が低いNeurod6遺伝子についても期待通りの結果を得ていた。このことから、原理的には可能であるため、C2C12細胞の細胞数を段階的に減らし単一細胞への実用化を目指した。その結果、ハイスループット化させた1細胞ChIL-Seqのパイロット版の立ち上げ特許の出願を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初予定のChIL-Seqのハイスループット化を進めておりおおむね順調に進展している。
RNA-Seqとの融合を進めChILA-Seqの実装を目指す
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Elife
巻: 8 ページ: pii: e46667
doi: 10.7554/eLife.46667.
巻: 8 ページ: pii: e48284
doi: 10.7554/eLife.48284.
Open Biol.
巻: 9 ページ: 190116
doi: 10.1098/rsob.190116.