公募研究
老年性認知症病態の大半を占める凝集性タウ蛋白質の脳内蓄積は神経機能障害や細胞脱落と密接に関連していることが知られているが、生理的に微小管結合能を有するタウ蛋白質がどのように自己凝集能を獲得し、どのようなタウ蛋白質分子種が毒性を発揮し、さらに毒性を有するタウ蛋白質が特定脳領域より拡散・伝播するのか、その技術的特異点は明らかになっていない。本研究では、タウ蛋白質相転移(正常から異常への変換点)がタウ蛋白質毒性の本体であると仮定し、生体イメージング技術を用いてrTg4510タウオパチーマウス(P301L変異型ヒトタウ蛋白質を大脳皮質・海馬にて過剰発現し約6ヶ月齢にて凝集性タウ蛋白質封入体形成に伴う脳委縮が検出されるマウス)におけるタウ病変発症の技術的特異点を同定することを目的とする。本年度は、凝集性タウ蛋白質線維(タウ244-372断片をヘパリン誘導により凝集させた線維)の脳内投与の予備実験を行い、神経変性への影響を確認した。また、タウオパチーの早期病態として興奮性ニューロンと抑制性ニューロンのバランス異常に着目したところ、2ヶ月齢のrTg4510タウオパチーマウス脳内で抑制性ニューロンの障害が興奮性ニューロンの変性や細胞死に先んじて起こることを見出した。さらに、タウ病変に伴う神経炎症を評価する目的で恒常性ミクログリアマーカーであるP2Y12受容体の加齢依存的な変化をタウオパチーマウスモデルにて評価し、タウ病変早期に恒常性ミクログリアが減少することを突き止めた。
2: おおむね順調に進展している
共同研究者との共著論文を複数出版することができた。
タウ病変の可視化に加えミクログリアの動態変化の追跡を可能とする早期病態変化を検出しうる生体イメージング技術の開発を進める。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 4件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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