研究領域 | トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現 |
研究課題/領域番号 |
20H04569
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
大杉 尚之 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (90790973)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | お辞儀 / 魅力 / 身体動作 / あいさつ |
研究実績の概要 |
「お辞儀」が第一印象に影響することは,日本においては一般的に信じられているが,実験的研究はほとんど行われてこなかった。研究代表者らは一連の研究により,日本人の大学生を対象とした実験を行い,お辞儀が顔の魅力を上昇させることを明らかにしてきた。その原因について,日本の文化的背景の影響を仮定してきたが,日本人大学生だけを対象とした実験では結論づけることはできない。そこで本研究では,複数の文化圏の集団に対してお辞儀が人物印象に及ぼす影響を検討し,この効果の文化依存性を明らかにすることを目的とした。 まず,コロナ状況下での実験可能性を検証するために,日本人参加者を対象にウェブでのお辞儀効果の再現実験を行った。実験を実施するために,HTML5とJavaScript (lab.js)を組み合わせた実験プログラムを作成し,サーバー上で実験実施とデータ保存が可能な環境を構築した。この実験環境下で,1)山形大学と北海道大学の大学生を対象としたウェブ実験,クラウドソーシングサービスを利用したウェブ実験を行なった。停止時間ありのお辞儀,なしのお辞儀,静止(統制)条件を比較した結果,静止条件に比べてお辞儀条件の魅力が高くなること,停止時間が長いお辞儀が短いお辞儀よりも魅力が高くなることがいずれの集団でも再現された。 次に,日本,米国,ブラジル,インドの参加者を対象とした文化間比較実験をウェブ上で行なった結果,日本では頑健なお辞儀効果が再現されたのに対し,他国ではわずかに動作による主効果が示された。差分を比較した検討から,お辞儀による飛躍的な魅力の上昇および停止時間による魅力上昇効果は日本特有であることが示された。その後,日本,中国(東洋文化圏内の国),米国を比較した実験も行い,日本に特異的な効果であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い,現地での対面実験を実施することができなかったが,ブラウザを利用したウェブ実験に切り替えることで,当初の目的通り,西洋文化圏と東洋文化圏の比較,東洋文化圏内での比較,お辞儀の習慣がない文化圏も含めた比較を行うことが出来ている。また,ウェブ実験の作成方法,非英語文化圏でのクラウドソーシング実験の実施方法,様々な人種のCGモデルの作成,標準化作業も進めることができ,今後の実験展開につながる技術を蓄積することができた。
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今後の研究の推進方策 |
東洋文化圏内での比較において,日本に特有な結果が示されているが,その原因については十分に検討できていない。今後は,東洋文化圏内の儒教の影響が強い国での検証(韓国,ベトナム,台湾等)を進めていく。また,お辞儀の使用場面の効果,動作主の人種の効果,お辞儀動作の種類の効果なども十分に検討できていないため,引き続き検討を続けていく。
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