研究領域 | トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現 |
研究課題/領域番号 |
20H04571
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
工藤 和俊 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (30302813)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コーディネーション / コミュニケーション / 対人間協調 |
研究実績の概要 |
近年、ヒトにおける社会的行動の進化的起源として対人間協調(コーディネーション)の役割とともに、協調行動を支える背景としてのリズミカルな周期運動、姿勢、緊張/脱力の役割が注目されている。そこで本年度の研究においては、リズムおよびコーディネーションの発達的変化について検討するため、立位歩行前の乳児の映像から、深層学習技術を用いたリズミカルな周期運動成分の抽出を試みた。その結果、一部の映像より特定周期の身体運動成分を抽出できることが明らかになった。 また、他者の存在が立位時の姿勢動揺に与える影響を明らかにするため、対面する2者の姿勢が2者間の距離変化によってどのように変化するのか検討した。実験では対面および背面条件で立位姿勢を維持する2者の頭部座標および足圧中心位置をそれぞれ光学式3次元動作計測装置および床反力計を用いて計測した。これらの計測データに対してトレンド除去相互相関解析(DCCA)およびトレンド除去揺らぎ解析(DFA)を用いた定量化を行った結果、対面する2者の足圧中心の動揺は数秒~10秒の時間スケールで同期したのに対し、頭部の前後座標位置は足圧中心よりも短い時間スケールで同期し、これらの変動特性は2者間の距離の増大に伴ってより反持続的になることが明らかになった。 さらに、対話する2名の関係性を第3者が認知する際のマルチモーダルな情報の役割を明らかにするためのオンライン実験系の構築を進めた。 これらの成果について、国際学会(CogSci2020)にて発表するとともに、運動構築の階層性の観点から書籍の分担執筆を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ感染症の流行によって新規の実験を行うことが困難になったため、まずは深層学習技術を用いた画像解析システムの構築を進めた。また、前年度の公募班研究(B01-K104)で得られた対面時の姿勢動揺データについて、非定常データに適用可能な力学系の解析手法であるトレンド除去相互相関解析(DCCA)およびトレンド除去揺らぎ解析(DFA)を用いた解析を試みた。さらに、演技する2者の関係性を特徴づけるマルチモーダル情報の探索については、オンライン実験系を構築し検討することとした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はオンライン実験系を用いた2者間の協調認知に関する実験的検討を進めることとする。また、深層学習技術を用いた画像認識手法を用いて、スポーツ競技における無意図的協調場面の抽出を試みる。さらに、身体スキル継承における姿勢および身体協調の役割について、先人の書を他者が書き写す臨書行為および音楽パフォーマンスを対象として検討する。
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