研究領域 | トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現 |
研究課題/領域番号 |
20H04577
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上田 祥行 京都大学, こころの未来研究センター, 特定講師 (80582494)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 顔認知 / 表情 / 社会的相互作用 / 対人認知 / 関係性認知 / 発達 / 集団 |
研究実績の概要 |
二者場面において、関係性の認知の発達過程を検討するために、児童を対象とした実験を行った。一方の実験条件では、観察者は、自身と対面するように呈示された様々な表情の写真を見て、その人物がどれくらいドミナントな人物であるかを評定するように教示された。もう一方の条件では、観察者は、様々な表情で向かっている二名の写真を第三者的な視点から見ているような状況におかれ、どちらの人物がよりドミナントな立場であるかを判断するように教示された。従来、成人を対象とした実験では、笑顔の人物は対面場面ではドミナントな人物であると判断されないが、二者比較場面ではドミナントな人物であると判断されることが示されている。 児童を対象として行った実験では、成人と同様に、対面場面と二者比較場面で異なる判断基準が用いられていることが示されたものの、そのパターンは成人のものと異なっていることが示された。今後は、この違いが関係性認知の発達の違いを反映したものか、児童用に教示を変化させたために生じたものかを、更に検討していく必要がある。 また、二者場面パラダイムを拡張して複数人(六人が関与する)場面とし、集団内での関係性の認知メカニズムを検討する実験のための予備調査を行った。この実験の結果、二者場面と同様に、笑顔の人物が集団の中で最もドミナントな人物であると判断されることが示された。このことは、二者場面で得られた結果が、より大人数の状況にも拡張できる可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画通り、児童を対象とした実験と、複数人物が関与する場面での実験を行うことができた。1年目が終了した段階で、実施計画に沿って遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
児童の実験の結果が成人と異なる点について、教示の違いによる可能性などを排除するための実験を追加して行う。また、現在は刺激として、笑顔・怒り顔などのカテゴリカルな表情を表出した顔が呈示されているが、モデリングソフトウェアなどを使用し、より微細な表情の違いが関係性の認知に与える影響を明らかにするための研究を実施する。
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