研究領域 | トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現 |
研究課題/領域番号 |
20H04583
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研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
山本 芳美 都留文科大学, 文学部, 教授 (50363883)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イレズミ / タトゥー / 日本近代文学館 / 彫千代 / 彫師 / 刺青下絵 / 台湾原住民族 / 沖縄 |
研究実績の概要 |
研究代表者の山本芳美は、予定していたフィールド調査は叶わなかったが、コロナ禍でも可能な研究を模索した。2020年5月に日本近代文学館において19世紀後半の日本人彫師である「彫千代」の刺青下絵や関連資料を掘り起こした。その下絵は2021年8月に業者に委託して撮影した。また、地元カメラマンに委託して、公益財団法人平野政吉財団が所蔵する彫千代の下絵の撮影をおこなった。 さらに、早稲田大学図書館と国会図書館において、主に1945年以前のイレズミ関連の雑誌や新聞記事、文学作品などを徹底的に渉猟した。 その作業を踏まえて、彫千代の下絵所有者であった有島生馬や藤田嗣治に関して考察した原稿を執筆した。一方で報告書にまとめるための下準備をおこなった。(この報告書は、『彫千代報告書』として2022年3月に125部を私家版として刊行した)。 これらの成果は「「日本みやげ」としてのイレズミ : 19世紀から20世紀初頭における外国人観光と彫師」と題して『日本研究』63集(国際日本文化研究センター)に投稿した。この論文は査読を経て複数回の書き直しを経て、2021年11月に論文として掲載された。 また、台湾の国立政治大學民族學系より招待を受け、紀要『民族學界』47号「沖縄特集」の「沖縄の針突(ハジチ)と台湾原住民族のイレズミー20世紀初頭を軸にした比較研究の試み」と題する論文を執筆した。(2021年4月に刊行) 前期公募班18H04202 「顔・身体表現 から検討するトランスカルチャー下の装飾美」の研究協力者を中心に2021年に立ち上げた「タトゥー文化研究会」で3回の研究会をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍において、2020年度中に予定していた台湾でのフィールド調査や資料調査は困難となった。そのかわりに研究テーマの枠組みから実施可能な研究領域を模索し、国会図書館や日本近代文学館を中心とした資料調査に切り替えた。国会図書館所蔵資料のデジタル化が充実したこともあり、資料をこれまで以上に集めることができた。 結果として、19世紀後半に来日した外国人旅客がみやげとして入れたイレズミと施術を担った彫師たちについての論文、ならびに沖縄の女性のイレズミと台湾原住民族のイレズミの比較研究の論文をまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、国外の実地調査が難しいことが見込まれるため、可能であれば沖縄や大阪などでの国内調査に切り替えることとする。国立民族学博物館での閲覧が可能となった時点で、小林保祥アーカイブズにある台湾原住民族パイワンのイレズミ施術写真ほかの検討、整理をおこないたい。 また、東京国立博物館に沖縄の女性のイレズミ(ハジチ)の施術道具が収蔵されているため、その写真や情報を入手することで、これまでなされていなかった物質文化の研究をはかりたい。そして、ハジチの習慣が廃れた後に米軍基地が配置されたことをきっかけに外来のタトゥー業が沖縄本島の各地に根づくことになったと予想される。2019年12月末におこなった予備調査をもとに、次年度により本格的な聞き取り調査を実施したい。同時に、1970年代後半から90年代半ばまでのハジチ調査原票が沖縄県内の教育委員会に保管されているため、その原票も確認したいと考えている。その確認作業により、行政調査の全体的な規模や調査票の内容、調査者の属性などが明らかにすることができる見通しである。
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