家庭内の相互行為場面の成果:これまで収録してきたデータの分析を行い,特に「手合わせ」と呼びうる独自の遊戯的相互行為場面の検討を行い,家族内だけではなく収録者も参与した手遊び場面についての検討を行い,相互行為構造の独自性の維持と変容の仕方を示した.この成果については日本認知科学会での発表,書籍内の章として執筆として成果発表を行った.また,多様な人々が参与することによる相互行為分析の難しさと,分析手立ての方法論の構築について,顔身体学の領域会議で共著発表を行い,若手優秀発表賞最優秀賞を受賞した.他食事場面における分析をすすすめ,重複障害者の参加者は,一方的に介助を受けているのではなく,自分の姿勢や視線といったキューを用いて,適切な食事を進めるタイミングを介助者に伝え,かつ介助者もそのキューを理解し,食事活動を進めていることを明らかにした.このことは,彼らがその場における間主観性を身体的なやり取りを通して構築していることを示すものである.この成果について,学会発表を行い,また論文執筆作業を実施している.
家庭外の相互行為場面の研究:自閉症スペクトラムやダウン症といった4名の発達障害児が通うトランポリン教室のフィールドワーク及びデータの収録を実施し,分析を行った.分析の結果,指導員だけが児童に対して行う指示や声掛けに対して,他参加児童が声掛けを繰り返すことや声援を送っていることを明らかにした.特に,トランポリン経験の浅い参加者がいる場合,その参加者がトランポリン練習をする場面で,他参加児童は声掛けの繰り返しや声援を送ることが多いことを明らかにした.このことは,習熟度の異なるメンバーによる運動教室の構築が,協働性の発達に寄与する可能性を示唆するものである.この成果については認知科学会にて発表を行った.
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