研究領域 | トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現 |
研究課題/領域番号 |
20H04592
|
研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
上田 悦子 大阪工業大学, ロボティクス&デザイン工学部, 教授 (90379529)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | スパースモデリング / 古典舞踊動作 / 特徴抽出 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「意味を持つ」ロボットの身振り生成のために,地域性を有する複数種類の古典舞踊から「ある意味」を表現する動作における共通特徴を抽出しロボットに実装することである.対話相手との積極的なコミュニケーションを実現するため,具体的には,フラダンスや日本舞踊やタイ舞踊などの「幸せ」を表現する動作から,共通する動作特徴を抽出し,「幸せ」を発話するロボットの身振を生成するというイメージである. 本研究で使用する動作データは,モーションキャプチャで取得した全身39ヶ所の3次元位置の時系列データで,フラダンスや日本舞踊など6種類の古典舞踊,「喜び」や「泣く」など18種類の意味を表現する動作データを使用して解析する.解析対象となるこのような舞踊動作データは取得に手間がかかるためデータ数を増やすことが困難であり,特にコロナ禍の昨今では簡単にデータ取得も行いにくい.加えて,高次元データとなることから解析手法には工夫が必要である.今年度は,少ないデータかつ高次元データの解析にも向いていると言われているスパースモデリングと,歩行の個人差抽出などによく使われている特異値分解を用いて特徴抽出を試みた. スパースモデリングでは,動作群を2種類選択し,一方の動作群を目的変数0,もう一方を目的変数1として定め,特徴量の候補である説明変数として,体の各部位の軌道長,最大速度,高さを用意し,これらから特徴量を抽出した.このとき抽出した特徴量を用いて動作群の分類を行い,その分類精度から取り出された特徴量の妥当性を検証した.その結果意味を表現する動作の共通特徴抽出は分類精度が低く特徴抽出に至らなかったが,地域性を有する舞踊ごとの特徴抽出については高い分類精度を得ることができ抽出可能性を示唆できている. 一方,特異値分解を用いた特徴抽出では,思ったような特徴を得ることができなかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スパースモデリングを用いて,感情ごとの意味動作の分類を試みていたが,現有している3次元の動作データだけでは数も少なく,それぞれ共通特徴が少ないため非常に困難であることがわかった.一方で,意味ではなく,舞踊種類ごとの特徴はスパースモデリングを用いることで比較的抽出できていることより,研究計画書に記述したとおり,意味ごとが困難な場合は地域性の分類ということができていることから,「概ね順調」と判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
スパースモデリングを用いた手法の有用性までは示唆できているが,説明変数を用意する段階で動作情報を圧縮しているためスパースモデリングの特徴を生かしきれているとは言えない.これより,次年度は時系列動作データそのままを使う方法を検討し,3種類以上の舞踊動作からの特徴抽出を進めていく.さらに,その他のアルゴリズムを適用して,意味を表現する動作の共通特徴抽出を試み,スパースモデリングより良い手法はないかを探っていく予定である. また,抽出した動作特徴をCGやロボット実機に実装し有効性を評価する準備も進めている.
|