研究領域 | トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現 |
研究課題/領域番号 |
20H04593
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研究機関 | 國學院大學栃木短期大学 |
研究代表者 |
中村 耕作 國學院大學栃木短期大学, その他部局等, 准教授 (30548392)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 顔身体土器 / 身体論 / 社会背景 / 縄文土器 |
研究実績の概要 |
顔面や手足などの身体装飾を付した土器(顔身体土器)が世界各地で散見され、国内では縄文~弥生時代にしばしば出現する。土器の機能にとって本来不要なものであり、また数も限られることから何らかの特殊な社会的状況の中で使用されたと考えられる。 一口に縄文・弥生といっても、時期・地域によって様々な地域文化によって構成されている。従来、縄文時代中期の中部高地~関東については、顔面把手・釣手土器・有孔鍔付土器などの集成にもとづき当時の歴史的文脈を基盤とした研究が行われており、研究代表者もその末端に連なってきた。また、弥生時代中期の東日本における再葬用の顔壺についても詳細な検討が行われている。しかし、他の縄文の地域文化においては歴史的脈絡の中に位置づけての考察は少なかった。そこで、本研究では各地の地域文化の接触が大きくなる現象を、本学術領域のキーワードである「トランスカルチャー状況」とみなして、社会的な意味を検討し、出現・展開過程のモデル化を図り、縄文・弥生以外との比較研究のベースをつくることを目標とした。当面、縄文時代後・晩期を詳細に検討した上で、上記の縄文中期例や弥生再葬顔壺と比較し、共通する部分をモデル化する計画であった。また、その前提として、詳細な形態が報告されていない資料の実測図・3Dデータ化を進めること、他の時期については研究協力者に検討を依頼することを計画していた。 しかし、本年度はコロナ禍で予定していた現地調査や共同研究は殆ど進まなかった。そこで、発掘調査報告書等の文献調査による後・晩期の顔身体土器のデータベース化に加えて、文化的・社会的分析・考察を予定より先行して進め、さらに、顔身体学の全体会議を通じて共同研究の可能性を討議した。また、顔身体土器の検討に必要な、儀礼用土器や異形土器などの特殊な土器、大形石棒・装身具などの身体性資料などの関連する資料群の検討も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のため一部計画を変更して研究を進めたが、研究の基盤となる現地調査や資料図化は十分に実施できなかった。これらは次年度以降に実施し、最終的な論考に反映させたい。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査は予定を変更して近隣を中心とし、可能であれば東北地方の重要資料の調査を行う。次年度は検討対象を後期・晩期を中心とするものに絞り、成果をとりまとめる。
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