研究実績の概要 |
エウロパでのNaClの探査を目指し、ドープしたNaCl結晶および氷の低温パルス電子ビーム照射とその後の吸光度、反射率測定のため、下記の研究を行った。 (1)Cs-Na-Cl 状態図上では固溶しないCsを0.1, 0.3, 1mol%含むNaCl粉末を大気中850℃まで加熱後徐冷し、透明結晶を得た。これを室温又は77Kにて、最高電圧1MV、最大電流4kA、100nsのパルス電子ビーム照射した。フィルム線量計で測定した吸収線量は9.4-9.8kGyであった。室温での照射後、NaClのF中心による463nmの吸収ピークが見られ、これは1mol%までのCs添加で変化しなかった。また、CsClの620nmのピークは検出できなかった。X線回折での相同定の結果、1mol%の試料にはCsClが見られるものの、それより少量添加の試料にはCsClが見られなかった。これより、Cs添加によるNaClのF中心のピーク位置は影響を受けないことが判明した。また、77Kでの照射後の時間変化に関して、F中心の強度は時間の平方根に比例して低下した。Cl空孔と電子からなるF中心は200K以上で拡散することが知られており、この変化は格子間原子など他の欠陥の拡散によることが示唆された。 (2)K-Na-Cl結晶の成長と室温パルス電子線照射 状態図上では全率固溶するKを1-3mol%含むNaCl粉末を大気中850℃まで加熱後徐冷し、透明結晶を得た。これを室温にて、最高電圧1MV、最大電流4kA、100nsのパルス電子ビーム照射した。フィルム線量計で測定した吸収線量は3.4-3.6kGyであった。NaClのF中心のピーク位置は、K量0mol%で463nmであったのが、3mol%で472nmに増加した。 (3)氷結晶の成長 直径5センチの球形、および長さ3センチの立方体透明氷結晶を作製することが出来た。
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