研究領域 | 水惑星学の創成 |
研究課題/領域番号 |
20H04615
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
薮田 ひかる 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (30530844)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地球外物質 / 有機金属錯体 / 走査型透過X線顕微鏡 / 選択的化学分解 / 高分解能質量分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、炭素質隕石中の酸不溶性高分子有機物(IOM)では様々な官能基が多種の金属元素と相互作用している可能性に着目し、IOMと金属元素の相互作用に必要な母天体水質条件決定を目指す。具体的には(1)走査型透過X線顕微鏡(STXM)を用いてIOMに含まれる金属元素の種類・化学形態・分布を解明する。また(2)IOMの特定の化学結合を切断する選択的酸化分解を段階的に実施し、IOMに含まれる有機金属錯体構造を同定する。 本研究では(2)の研究としてIOMのアルカリ酸化銅分解を行った。Murchison隕石粉末(670 mg)に HCl/HF 法を施し IOM を分離した。得られた IOM 7.2 mg に酸化銅 9.9 mg、2N NaOH水溶液 2.5 ml、硫酸アンモニウム鉄(Ⅱ)六水和物を 1.2mg を加え、170℃で 3 時間加熱しアルカリ酸化銅分解を行い、高分子中のエーテル結合の選択的化学分解を行った。加熱後の試料溶液を中性に戻した後、分解生成物を酢酸エチルで抽出し、100μl に濃縮後、高分解能質量分析装置(LTQ Orbitrap XL)で分析を行った。その結果、陰イオンモードで 200 種以上、陽イオンモードで約 400 種の分解生成物を検出した。このうち、Hayatsu et al. (1980)がIOM の主要なアルカリ酸化銅分解生成物として同定した 27種の化合物に対応する精密質量と、本研究で新規に検出された分解生成物約430種の精密質量を検出した。このうち組成式を決定したものは、脂肪族カルボン酸類95 種、1~3 環までの芳香族カルボン酸・アルコール類が98種、含窒素化合物9種、含硫黄化合物15種で、残り200種以上が未同定である。大部分が有機分子である可能性が高いが、今後このマススペクトルを解析し有機金属錯体を探索する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は「はやぶさ2」初期分析の固体有機物分析サブチームリーダーを務めており、2020年度はSTXMのマシンタイムの大部分を「はやぶさ2」の初期分析リハーサルに使ったため、個人の研究としての本研究課題の進捗はやや遅れている。もともと個人の研究の時間としてSTXMのマシンタイムも確保していたが、「はやぶさ2」のリハーサル途中でスペクトルに汚染が含まれていることに気がつき、汚染源の発見(装置チャンバー内の残留ガス)とその防止対策、およびその後のスペクトル確認に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、代表者は「はやぶさ2」の初期分析本番に専心する予定になっている。ただ、「はやぶさ2」と本研究を両立させるために、5、6月のSTXMマシンタイムでは、両方の目的を同時に満たせるような利用をし、初期分析が始まる前に本研究の成果を出しておきたい。また、IOMの化学分解生成物の高分解能質量分析の方は学生を協力者として本研究に参画させているので、コンスタントに成果を挙げることができる見込みである。
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