公募研究
本研究では、炭素質隕石中の酸不溶性高分子有機物(IOM)では様々な官能基が多種の金属元素と相互作用している可能性に着目し、IOMと金属元素の相互作用に必要な母天体水質条件決定を目指す。具体的には(1)走査型透過X線顕微鏡(STXM)を用いてIOMに含まれる金属元素の種類・化学形態・分布を解明する。また(2)IOMの特定の化学結合を切断する選択的酸化分解を段階的に実施し、IOMに含まれる有機金属錯体構造を同定する。研究代表者は「はやぶさ2」初期分析の固体有機物分析サブチームリーダーを務めており、2021年度はSTXMのマシンタイムの全てを「はやぶさ2」の初期分析に使ったため、個人の研究としての本研究課題(1)の進捗は遅れてしまった。ただ、隕石から分離したIOMの蛍光X線分析を行った際、有機元素以外にはSに加えてMgが検出された。このMgが試料に固有であることを今後実証する必要があるが、母天体水質変成によってIOMが錯体構造を有している可能性が期待できる。(2)隕石から分離したIOMのアルカリ酸化銅分解を行った。その結果、陰イオンモードで200種以上、陽イオンモードで約400種の分解生成物を検出した。先行研究でIOMの主要なアルカリ酸化銅分解生成物として同定された 27種の化合物に対応する精密質量と、本研究で新規に検出された分解生成物約430種の精密質量を検出した。このうち組成式を決定したものは、脂肪族カルボン酸類95 種、1~3 環までの芳香族カルボン酸・アルコール類が98種、含窒素化合物9種、含硫黄化合物15種で、残り200種以上が未同定である。解析を進めたところ、分解生成物の大部分が有機分子であったため、エーテル結合を介した有機金属錯体は検出限界以下であることが判明した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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