研究実績の概要 |
本研究は、高次トポロジカル絶縁体Bi(111)薄膜を用いて、膜厚変化による次元性の低下と外部磁場による時間反転対称性の破れによって発現する新たなトポロジカルエッジ状態を局所トンネル分光測定により観測することを目的としている。 高次トポロジカル絶縁体Bi(111)薄膜の電子状態の膜厚依存性を調べるため、Si(111)基板にBi薄膜を作製し、低温走査トンネル顕微鏡(STM)によるBi薄膜表面の構造評価と微分コンダクタンス測定を行った。膜厚約100nmという比較的厚い膜では、原子レベルで平坦なテラスと、結晶構造の対称性を反映して120度の角度で曲がるステップエッジが薄膜表面に形成された。ステップの高さは約0.4nmで、先行研究と同様に、Bi薄膜が2層成長した。微分コンダクタンススペクトルにおいて、平坦なテラスの領域では観察されない約+180mVのピークがステップエッジでは観察された。また、そのピークの有無が、ステップが120度曲がる毎に変化することもわかり、先行研究で報告されている高次トポロジカル絶縁体のトポロジカルエッジ状態[Nat. Phys. 14, 918 (2018)]であることを確認した。膜厚を薄くすると、Bi薄膜の構造が変化し、(111)表面ではなく、黒リン(110)表面をもつことがわかった。このBi薄膜の構造の膜厚依存性により、超薄膜におけるトポロジカルエッジ状態の変化を議論するのは困難であると考えられる。一方、黒リン(110)表面をもつBi薄膜においてエッジに局在する電子状態を微分コンダクタンススペクトルにおいて発見した。今後、微分コンダクタンスのマッピングを行うことにより、その電子状態がどのようなエッジに存在するのかを明らかにしたい。
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