研究領域 | 次世代物質探索のための離散幾何学 |
研究課題/領域番号 |
20H04633
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
村上 修一 東京工業大学, 理学院, 教授 (30282685)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / 離散幾何学 / バルク境界対応 / コーナー状態 / 物性理論 |
研究実績の概要 |
本年度は主に、コーナー電荷が分数に量子化するような2次元高次トポロジカル絶縁体(obstructed atomic insulator)について、結晶形状が3,4,6回回転対称性を持つ場合に、そのコーナー電荷の量子化値の一般公式を導出した。これについては先行研究もあるが、結晶境界の影響による、境界付近の原子核の位置のずれや電子状態の変化についての議論が十分でなかった。本研究ではこれらの影響を一般的に議論し、コーナー電荷の公式の一般形を導出するとともに、回転対称性がある限りはこれらが量子化値に影響しないことを一般的に示した。さらに量子化値が現れるための条件を同定し、第一原理計算も用いて候補物質の例を示した。このように一般的な枠組みで2次元の場合を整理できたことは意義が大きく、3次元系への一般化に向けて道を開くものである。 また一方で、こうした系でバンドギャップ内にコーナー状態が現れる場合について、コーナー状態の波動関数のふるまい、特にそのバルクへの侵入長の性質を明らかにした。BBH模型を例として用いて、コーナーのみにポテンシャルを加えたときのコーナー状態の波動関数の解析解を与えた。その解は、予想される単純な指数関数減衰する形とは大きく異なり、複雑な楕円積分で表されることを見出した。これにより、コーナー状態の空間分布は異方的であり、バルクへの減衰とエッジに沿った減衰とで減衰長が異なることを見出した。特にコーナー状態がエッジ状態ギャップ端に近づくと、コーナー状態がエッジに沿った方向に異方的に大きく伸びて分布することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
領域内外の研究者とも議論を行うことで研究の方向性を定めることができると同時に、コーナー電荷をもつような3次元高次トポロジカル絶縁体についてはかなり一般的な結晶形状についても、ヒンジ電荷、コーナー電荷の量子化を示すことができる見込みを立てることができた。このように、当初予想していた以上に一般性のある研究展開への道筋がついてきたため、当初計画以上に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2次元での高次トポロジカル絶縁体において得た知見を、3次元へと応用して、さまざまな頂点推移的な多面体の結晶形状に応用する。2次元の場合と比較すると、結晶形状の多様性が非常に豊富で質的にも異なるため、その取扱いは難しくなるが、領域内外の研究者との議論も継続することで、一般的な結晶形状でのコーナー電荷、ヒンジ電荷の量子化値を計算することを考えている。また並行して候補物質の探索を、第一原理計算も用いて進める。
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