研究実績の概要 |
普遍的かつ貴金属を使用しない触媒材料設計を達成するため、数学的に炭素ネットワーク構造を予測する標準実現に対して、窒素原子などの化学元素を導入する枠組みを提唱した。より正確に構造を再現するために、近接原子間の反発力を考慮することで、必要最小限の物理現象を組み入れた改善型標準実現モデルを開発し、既存のシミュレーション法を用いて材料設計可能なレベルで構造を再現できていることを確認した。また、数学モデルから導き出された最適な材料設計を用いて、実際に 3 次元グラフェンを作製し、意図した触媒設計が有用であることを実験的に実証した(Carbon 182, 2021, 223-232)。 3 次元グラフェン触媒の設計を行う上で、曲面を形成するために導入された欠陥構造を持つカーボンネットワークの単純化を行った。カーボンネットワークをバネの連結体とみなした標準実現に対して、第二近接原子間の反発力を加えた改善型標準実現を構築した。この改善型標準実現が正しく構造を構築できるかどうかを最も精度の信頼性が高いとされる第一原理計算手法と比較して調べた。六員環から構成されるグラフェンの格子に五員環と七員環のペア欠陥(以下、5-7 欠陥)を二つ導入した構造を再現したところ、両者の構造特徴は定性的にほぼ一致し、曲面の指標であるガウス曲率の変化を再現できることが明らかとなった。CPU1 コアでの計算時間を簡単に比較すると、改善型標準実現の計算時間が 39 マイクロ秒に対して、第一原理計算手法の計算時間は 4 万 6 千秒であったので、改善型標準実現は第一原理計算より 10 億倍速く計算できることがわかった。
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