曲面の非等方的エネルギーの変分問題は、扱うエネルギー密度関数に応じて、液体・方向性のある液晶・結晶(固体)の全ての場合の最適形状を求めるという課題を与える。さらに、ローレンツ・ミンコフスキー空間内の計量が正定値とは限らない平均曲率一定(以下ではCMCと略記)超曲面もまた、この種の変分問題の解の例と見做せる。このような一般的な変分問題の解として、滑らかな曲面・カドのある曲面・多面体(あるいは離散曲面)の全てが現れる。解は一般には特異点を持ち、それは頂点・辺やその高次元版、因果型(causal character)が変化する点などである。これらを統一的に扱うことにより、滑らかな微分幾何学や楕円型作用素が支配的な曲面の研究では扱わなかった曲面の解析を行うことになる。これらに関して以下の結果と展望を得た。 非等方的エネルギー密度関数が2階連続的微分可能で凸性を持つ場合について、(n+1)次元ユークリッド空間の楔状あるいは錐状閉領域における超曲面についての自由境界問題のエネルギー極小解の存在と一意性定理を得、学術雑誌での出版が決定した。 (n+1)次元ローレンツ・ミンコフスキー空間内の空間的グラフ及び時間的グラフの平均曲率に対するHeinz型評価、及び、全超平面上で定義された関数のグラフとなっている空間的CMC超曲面及び時間的CMC超曲面が超平面となるための、グラフを定義する関数に対する十分条件を得、学術雑誌で出版した(川上裕氏(金沢大),本田淳史氏(横浜国立大),通峻祐氏(輪島高)との共同研究)。 特異点を持つ可展面(平面を伸び縮みさせずに連続的に曲げたり折ったりして得られる曲面)に対するある変分問題の最適解を決定した。この課題については多数の数値計算結果が知られているので、今後は今回得られた理論的な最適解との優位性の比較を行い、特異点を持つ曲面に対する変分法の研究を推進していく。
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