公募研究
本研究では、金属有機構造体のトポロジーに由来する機能開拓を行った。まず、P曲面、D曲面、G曲面といった極小曲面構造を有するMOFを鋳型とする多孔性炭素の作製に取り組み、その負極特性を検討したところ、Gyroid炭素は初期容量963mAh/gを示し、2サイクル目以降、約600mAh/gで安定化した。また、Diamond炭素は、初期容量1019mAh/gを示し、その後容量は2サイクル目の580mAh/gから100サイクル目の666 mAh/gまで増加した。一方で、cubic炭素は、1サイクル目は683mAh/gを示し、2サイクル目は422mAh/gに減衰したが、それ以降の容量は徐々に上昇し、100サイクル目の容量は509mAh/gとなった。炭素負極材料の容量は、グラファイトの場合、6つの炭素当たり一つのリチウムイオンが挿入されることで計算されることから、表面積との相関関係が考えられる。このように、焼成する前のMOFの極小曲面構造に基づいた表面積の差に由来する電極容量の違いという結果を得ることができた。一方で、上述のようなMOFを鋳型とする研究とは異なり、MOFのトポロジーそのものがMOFの物性に影響を与える例として、同一形状を有するMOFにおいて、金属イオンが異なることによるトポロジーの歪みによって、水の吸着量が異なるという現象を見出すことができた。これについては、現在、トポロジーと水吸着の関係性を数学的観点から解明しようとしている。さらに、ポルフィリンとZrのみからなるMOFにおいて、電気化学的手法を用いて生成するMOFのトポロジーを意図的に変化させることにも成功した。
2: おおむね順調に進展している
金属有機構造体(MOF)を鋳型とする三次元多孔性炭素の創製とその電極特性を開拓し、鋳型とするMOFの極小曲面といったトポロジーが、電極特性と相関関係のあることを明らかにしつつあり、研究は計画通り進行している。また、MOFのトポロジーに起因すると思われる物性機能も見いだせており、今後の数学者との連携が大変期待される。一方で、当初計画していた三次元構造を有するピラー化グラフェンの創製と形状解析について、ピラーをこれまでのSWNTから変更して有機架橋分子にし、これとRGOからなるピラー化グラフェンの作製をしつつあり、順調に進行していると言える。
金属有機構造体(MOF)のトポロジーと物性の相関研究については、ポルフィリンとZrのみからなるMOFが非常に多種の構造異性体を示すことに着眼し、様々なZr-ポルフィリンMOFを作製し、その電極特性を計測する。その結果、幾何構造がどのように電極特性に影響するかを明らかにして、数学が拓く高性能材料の開発を実現する。一方で、三次元構造を有するピラー化グラフェンの創製と形状解析については、有機架橋分子とRGOからなる複合体の電極特性を幾何学的特徴と結び付けて議論し、高性能な電極材料を得るための一般則を見出す。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Materials
巻: 14 ページ: 24
10.3390/ma14010024
Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 59 ページ: 22171-22178
10.1002/anie.202009400
Chem. Commun.
巻: 56 ページ: 9106-9109
10.1039/d0cc03772a
巻: 59 ページ: 7836-7841
10.1002/anie.201913578