研究実績の概要 |
細胞内を拡散運動するタンパク質を研究対象として,その単量体と複合体を区別し,且つ,さらに別のタンパク質が結合してできる複合体分子の大きさとその量比と,その拡散速度を明らかすることを目指した。生細胞測定で困難なことは,細胞内分子夾雑状態の効果を考慮しつつ解析を行う必要があることである。その解決のために,申請者はこれまでの蛍光相関分光法/蛍光相互相関分光法(FCS/FCCS)測定で得られる並進拡散測定だけでなく偏光蛍光相関分光法で得られる回転拡散測定に注目した。 特に、細胞内夾雑状態を示すパラメーターとしてPEG、BSA、Ficollなどの種々の材料での微環境状態が異なることを、溶媒中ので得られた並進・回転拡散時間を、基準となる溶媒中(PBSや純水)の並進・回転拡散時間で割った値である相対並進拡散時間(TD)と相対回転拡散時間(TR)を利用することで表示可能であることを明らかにした。 生細胞測定における,細胞内微環境の相違について、これまでHela,HEK293, Nueuro2A, Cos-7等の細胞を比較し、それぞれの特徴を明らかにした。その特徴は、ノコダゾール処理により均一化し差が見えなくなることも分かった。 最終年度においては、特に装置の改良に注視し、検出装置の安定化のため,これまでの光ファイバーで接続したAPD(avalanche photodiode,)ではなく,小型光電子増倍管(PMT)2台を利用して,偏光ビームスプリッター(polarizing beamsplitter, PBS)からの光シグナルを直接検出するように改良を行なった。高感度化を目指すために,種々のPMTを検討した結果、MPPCと呼ばれる検出器が感度を4倍から5倍に引き上げることが可能であることを明らかにした。
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