核内構造体Cajal body(CB)はスプライソソームのサブユニットsnRNPが成熟、集積する場で、様々な環境変化に応答してサイズや数が調節される。我々は細胞内のsnRNP量を変動させる化合物探索を行なっており、陽性化合物にはCBに影響する化合物も含まれると考え、CB観察による二次スクリーニングを行なってきた。その結果、デヒドロコスツスラクトン(DCL)で細胞を処理した場合にCBが分散し、その際にはCajal body形成の必須因子で、欠損が脊髄性筋萎縮症の原因となるSMN蛋白質も核内で分散し、またSDS-PAGEでの移動度が変化することを見出した。さらにこの移動度変化がSMNのプロリン異性化によることを変異体を用いた実験で確認し、当該プロリンのアラニン置換変異体ではSMNの二量体、多量体の形成能が温度依存的に低下した。しかし、実際にプロリンの異性化が起こっていることを示すには、本来のSMNの当該プロリンの状態がCis型であることを実証する必要があり、今年度は共同研究によりその検討を進めてきた。まず、SMN蛋白質を大腸菌で発現させたところ、ヒト細胞での発現時と同様に、野生型の蛋白質と標的プロリンをアラニンに置換した変異体ではSDS-PAGEの移動度に大きな差が見られた。このことから、プロリン異性化がSDS-PAGEで移動度変化として検出できる理由を大腸菌の組換え蛋白質で検討できることが明らかとなり、今後プロリン異性化を検出する新たな方策につながると期待される結果であった。
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