公募研究
分子夾雑環境である小胞体内における酸化的フォールディングの観測法を新たに開発し、世界に先駆けて細胞内フォールディングの理解を目指した。セミインタイクト細胞を用いた小胞体内酸化的フォールディングの解析技術は海外のグループと開発を進めてきたが、渡航が制限される中で、2020年度は、小胞体内フォールディング補助因子の構造機能相関研究に注力した。小胞体内局在シャペロンであるP5に着眼し、P5の新規モチーフの発見と機能制御についてCell PressのStructure誌に論文を発表した。さらに、このP5は小胞体局在酵素による液滴に含まれることを発見した。この発見はこれまで集積されてきた「従来の希薄溶液中の酵素・シャペロン」の挙動だけで説明できない生命現象に立脚し、分子夾雑下新たな酵素・シャペロンの実際に迫る発見であり、今後、論文化を進める。また、農工大村岡教授らと、酵素・シャペロンを模倣した新たなフォールディング補助分子の開発も進めており、一部は論文として成果報告しており、デザイン法を確立しつつある。今後細胞内分子局雑下での検証を行う必要がある。
2: おおむね順調に進展している
セミインタイクト細胞を用いた小胞体内酸化的フォールディングの開発は海外のグループと行っているが、海外の渡航が制限される中2021年度進まなかった。一方で、小胞体局在シャペロンであるP5やERp57の原著論文化が進んでおり、新たな知見が得られつつあり、分子夾雑下フォールディング補助の理解は格段に進んだ。また、酵素を模倣した新たなフォールディング補助分子を有機的に合成し、その有用性を論文化した。特に、P5の新規構造を決定し、Structure誌に掲載されたことは成果として挙げられる。以上の理由により、(2)とした。
無細胞タンパク質合成系とセミインタクト細胞の技術を組み合わせた新規システムの開発を進め、今後各種PDIファミリーをsiRNAでノックダウンしたセミインタクト細胞を用い、小胞体内酸化的フォールディングを観察することで、小胞体内における個々のPDIファミリーの機能を解析する。さらに、新たに合成した人工シャペロンにおいても、セミインタクト細胞を用いることで、小胞体内酸化的フォールディングの効率を検証し、分子夾雑環境である細胞内でも十分にはたらく新たな人工シャペロンを独自に開発する。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 図書 (2件) 産業財産権 (2件)
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