公募研究
難治癌の克服には、患者個別に最適な治療薬を精度よく選択できるシステムを構築することが必須である。がん細胞における薬効を制御する酵素・受容体・トランスポーターのin vivo での活性を構成する要素を解明し、これら要素の積み上げによってin vivo の癌細胞内の酵素・受容体・トランスポーターの活性を再構築し、分子夾雑系である「癌細胞における薬効に関与する分子システム」を解明し、患者個別に薬効の予測および最適薬剤の選択を可能にする診断基盤を構築することを目的とする。2018-2019年度において公募班として本領域に参画させていただき、今回の研究の基礎である「再構築手法」を確立することができた。具体的には、輸送担体群が形成するin vivoの輸送分子夾雑環境を、生体内における輸送担体タンパク質の絶対存在量とin vitroで計測可能な単分子当たりの輸送活性の統合によって再構築できることを実証した。今回の研究課題は、この発展形と位置付けられる。2020年度は、膵臓がんに対する抗がん剤「Gemcitabine」の 関連の酵素とトランスポーターについて、膵臓がん細胞および膵臓がん組織におけるタンパク質存在量(mole)を解明した。それらの中から、有望な重要分子としてdCKを絞り込んだ。dCK 1mole あたりの活性および膵臓がん細胞におけるdCK発現量を統合することによって、膵臓癌細胞内におけるGemcitabine 動態を再構築し、それに基づいてGemcitabine の薬効強度を予測できることを実証した。Gemcitabine感受性の異なる複数種類の膵臓がん細胞株について、それら感受性を精度良く予測できることを実証した。さらに、膵臓がん患者における術後生存期間の個人差を精度良く予測できることも実証した。
1: 当初の計画以上に進展している
膵臓がんと脳腫瘍を対象とした薬効予測を目標としているが、1年目に、膵臓がんのプロジェクトを完了し、予定前倒しで脳腫瘍の研究計画に着手しているため。
膵臓がんについて効果予測システムを構築できたため、2021年度は、もう一つの難治癌である脳腫瘍について着手する。様々な受容体が脳腫瘍の増殖に関与する。各受容体シグナルの腫瘍増殖への寄与を予測し、最適薬剤を選択できることを実証することを計画している。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://www.pharm.tohoku.ac.jp/~soutatsu/dds/profile/uchida.htm