研究領域 | 分子夾雑の生命化学 |
研究課題/領域番号 |
20H04691
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福山 真央 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40754429)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞内液滴 / コアセルベート / マイクロ流体 |
研究実績の概要 |
近年、細胞内でタンパク質や小分子・核酸などが過渡的に油滴状の10 nm - 数μmサイズの分子夾雑環境(コアセルベート)を形成し、細胞内反応の制御に大きな役割を果たしていることがわかってきた。in vitroにてコアセルベート実験を行う場合、コアセルベート同士の合一が原因となりそのサイズは数十μm以上になってしまい、コアセルベートのサイズ依存的挙動についての解析が困難だった。本研究では、コアセルベートの機能のサイズ依存性を明らかにするとともに、サイズ・形状を制御したコアセルベートで網羅的に実験するプラットフォームの構築を目的とする。 本年度はFlow focusing methodを用いて、アガロースマイクロゲル粒子の内でのpoly-L-lysineとATPのコアセルベート作成を実証した。操作の容易さの観点より、当初予定していたマイクロ水滴ではなく、マイクロゲル粒子に変更した。ゲル形成中の混合の度合いにより、球状だけではなくカプセル状のコアセルベートの形成が可能であることが分かった。 また、当初はマイクロ水滴の縮小により100 nmサイズのコアセルベートの作製を計画していた。しかし、マイクロ水滴中でのコアセルベート内蛍光標識の蛍光強度がpH、バッファーによらず、マイクロ水滴縮小に伴い減少することが分かった。このことよりマイクロ水滴縮小時に油相の一部がコアセルベートに分配するなど、縮小操作自体がコアセルベート物性に影響を及ぼすことが分かった。そのため、微小コアセルベート作製を、ゲルを用いた方法に変更した。ゲルを用いることで、コアセルベート同士の合一による成長を抑制し、微小コアセルベートの長時間観察が可能になった。ゲル中での微小コアセルベートを利用し、今後アミロイド形成や酵素反応速度のコアセルベートサイズ依存性について解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定から変更した点もあるものの、おおむね順調に進展している。微小コアセルベートを作製する上でマイクロ水滴縮小法を使用する予定であったが、アガロースゲルを用いた作製法に変更した。これにより、様々なサイズのコアセルベートの一斉解析が可能になり、研究がより速く推進できると期待している。また、コアセルベート入りマイクロ水滴の作製についても、マイクロゲル粒子を使用した作製法に切り替えた。この結果、当初予定していた球状のコアセルベート以外にも、粒子作成時の液体混合速度やゲル化のタイミングを制御することで、カプセル状のコアセルベートの作製も可能になった。このように、コアセルベートの形状制御が可能になることで、細胞中で観察される様々な形のコアセルベート(例えば核小体のような二重構造)の形状/空間配置と機能の関連性について議論するためのプラットフォームとして使えると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
ゲル中に形成したコアセルベートを利用して、コアセルベートサイズ依存的な物性・機能変化を解析する。具体的には、チオフラビンTの蛍光変化を利用したアミロイド形成の観察や、発蛍光基質を用いたβガラクトシダーゼの酵素反応速度解析など、蛍光強度変化を利用したコアセルベート機能解析を予定している。そのため、今後Open CVを利用したコアセルベートサイズ・蛍光強度自動取得用の画像解析スクリプトを作成し、研究を効率化する予定である。また、コアセルベートの網羅的挙動解析に向け、コアセルベート入りマイクロゲルの分取システムの実証を行う予定である。
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