(I)細胞膜レセプターの活性をアップコンバージョンナノ粒子を用いて制御する技術 前年度までに開発したoptoINSRについて,新たなアデノウイルスによる導入方法を検討した.ウイルス溶液をマウスに導入したところ,数日後にoptoINSRの発現が確認された.また光操作膜タンパク質を発現した細胞群が肝臓全体にわたって散在する様子が確認された.次に,麻酔下で開腹し露出した肝臓表面に青色LED光を一定時間照射したところ,光照射に伴う光操作膜タンパク質および下流分子のリン酸化が確認された.トランスジェニックマウスについて,予想に反してタモキシフェン誘導なしでも光操作膜タンパク質が発現していることを示唆する結果が得られた.また,シンガポール南洋理工大学のBengang研究室からLNP合成の技術移転を進め,近赤外光照射に伴い青色を発する粒子の作成に成功した. (II)細胞膜レセプターのリサイクリングを近赤外光により操作する技術 発光タンパク質NanoLucを用いて細胞膜表面の膜タンパク質量を定量し,光依存性エンドサイトーシスを評価した.その結果,E-fragmentを融合したGPCR(DRD1,DRD2)について,青色光照射に伴う膜タンパク質量の減少が確認された.次に,光依存性エンドサイトーシスに伴い,リガンド刺激による下流シグナル量に変化が生じるかを確認するため,細胞内cAMP濃度を定量可能な生物発光センサーGloSensorを用いてDRD1-E-fragmentを発現した細胞において,光照射条件下でドーパミン添加時の下流シグナル量を評価した.その結果,光照射時にはドーパミン添加に伴うcAMP上昇幅が縮小することが明らかとなった.一方で,E-fragment融合型DRD2を恒常発現するトランスジェニックマウスについて予備実験を行ったところ,光照射時に行動が変化する兆候が確認された.
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