研究領域 | 分子夾雑の生命化学 |
研究課題/領域番号 |
20H04698
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森廣 邦彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70713890)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リキッドバイオプシー / マイクロRNA / DNAナノテクノロジー / HCR / Staudinger還元 / がん / Lab on Paper / 化学療法 |
研究実績の概要 |
本研究ではがん患者の体液中に特異的に存在するマイクロRNA (miRNA) を高感度に検出するシステムを開発し、従来の検査方法と比較して低侵襲性のリキッドバイオプシーの開発を目的とする。開発したシステムを搭載した紙デバイスを作製し、簡便で高感度ながん診断を実現する。 2020年度は多くのがん細胞で特異的に発現しているmiR-21に応答して色素分子Resorufinを多重放出するシステムを構築した。具体的には、DNAナノテクノロジーの1種であるハイブリダイゼーション連鎖反応 (HCR) と代表的な生体直交型反応であるStaudinger還元を組み合わせることで、miRNAの高感度検出を達成した。本システムはmiR-21の存在量によって溶液の色調が変化するため、特別な機器を必要とせず目視による検査が可能である。 またがんの診断のみならず治療も視野に入れ、本システムの生細胞内での利用も検討した。蛍光分子で修飾した2種のヘアピン型DNAプローブをヒト細胞にトランスフェクションした結果、miR-21を高発現しているHeLa細胞内でのHCRの進行が観察できた。一方で、miR-21をほとんど発現していないHEK293T細胞においてはHCRの進行が認められなかったことから、細胞内miRNA量に依存したHCRが可能であることが分かった。 以上の研究成果は、がんの早期診断および有効な治療法の開発に資するものであり、2021年度以降の応用研究につながるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度はHCRプローブの配列設計および化学合成を実施し、miR-21に高効率かつ高選択的に応答するプローブセットを見出した。またmiR-21に応答して色素分子Resorufinが放出されることを反応液の目視観察によって確認することが可能となり、リキッドバイオプシーとして有用であることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は開発したシステムを紙デバイスに搭載し、簡便で高感度なリキッドバイオプシーを開発する。また、生細胞内での応用をより詳細に検討することで、診断のみならずがんの治療法としての応用も検討していく。
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