研究領域 | 分子夾雑の生命化学 |
研究課題/領域番号 |
20H04699
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中村 浩之 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (30274434)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ケミカルラベリング / タンパク質間相互作用 / 生細胞内 / 有機光触媒 / チロシン |
研究実績の概要 |
あらゆる生物学的経路にはタンパク質-タンパク質相互作用(PPI)が関わる。この様々な生物学的経路を解明するために、PPI を検出・同定する技術の開発が求められている。本研究では、細胞内在性の色素を励起しない波長領域で活性化可能な光触媒を開発し、従来法では検出が困難であったPPI の検出・同定法を確立することを目的として研究を遂行した。 本年度は、検討項目(1)として、非特異的なラベル化反応を抑制することを目的とし、評価の際に候補となる光触媒をアフィニティービーズ上に担持し、モデル標的タンパク質には炭酸脱水酵素(CAII)を選択し、そのリガンドである4-スルファモイル安息香酸をビーズ上に担持した系で 、Cy5 の他に種々のシアニン系色素やChlorin、Aza-BODIPY などの近赤外色素のラベル化触媒能を評価した。その結果、アクリフラビン、Chlorin、Aza-BODIPYが本ビーズを用いた評価系でラベル化効率が高いことがわかった。そこで、検討項目(2)として、検討項目(1)で選定した光触媒に対してHaloTag のリガンド連結分子を作製した。次に、このHaloTag リガンド分子を用いて、触媒の透過性や細胞内の還元条件の影響を考慮せずに、近接標識での触媒活性を評価するために、細胞膜上での光触媒近接ラベル化の検討を行った。細胞膜上タンパク質である血小板駆動型成長因子受容体の膜貫通ドメイン(TM)を選択し、TM-HaloTag遺伝子をHEK293FT 細胞へ導入し、近接標識を行った。その結果、アクリフラビン結合HaloTagで近接場標識が進行したことから、アクリフラビンは細胞膜上の多くのタンパク質と相互作用していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染拡大の影響で繰越申請したが、概ね研究計画通りに知見が彫られており、論文発表も行うことができている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、DNA翻訳や複製においてPPI パートナーが時空 間的に変化するヒストンH2Bを対象タンパク質に選択する。令和2年度にで確立した手法により細胞内のH2BのN末(もしくはC 末)に、HaloTagを強制発現させ有機光触媒-HaloTagリガンド連結分子を作用させることで光触媒を細胞内へ導入する。このヒストンH2B-光触媒が発現した 細胞に対して、申請者が開発したラベル化剤存在下で可視光を照射し、ラベル化されたヒストンH2BのPPIタンパク質パートナーの網羅的解析を 行う。研究概念がうまく機能すれば、他のヒストンモノマー(H2A, H3, H4)のみならずRNA-binding proteinなどがラベル化されるはずである 。上記の手法により方法論として確立した後、PPI パートナー未知の標的への適用や、領域内からのアドバイスを受けつつ、学術的に意義の大きいPPI を標的とした研究へと発展させる。
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