研究領域 | 分子夾雑の生命化学 |
研究課題/領域番号 |
20H04702
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
新井 敏 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 准教授 (70454056)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光熱変換 / 熱力学 / 1細胞 / 蛍光温度センサー / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
本研究課題では、光熱変換色素に近赤外線レーザーを照射して生じる熱で、1)細胞内の標的とする空間の温度を制御する方法論、及び、2)生体分子集合体へ直接熱ストレスを加える手法の開発を目標とする。本年度は、1と2の研究項目を併行して実施した。 1)細胞内の化学反応の熱力学解析と細胞構成成分の熱物性の解明:前回公募研究で見出している結果を活かし、光熱変換効率の高い色素の設計・合成を行った。合成難易度が高く、今まで失敗していたが、マイクロウェーブを効果的に使用することでこれを乗り越え、年度の終盤には、光熱変換効率に優れた色素を見出した。研究計画当初の値には達しておらず、小器官の選択性も低いが、得られる温度変化の大きさには改善が見られ、5-8℃程度の温度上昇を達成した。なお、小器官の温度測定は、蛍光温度センサーを用いて測定した。 2)熱が生体分子集合体に与える影響を検証:光熱変換色素から得られる無輻射失活エネルギーを用いた新たな細胞機能制御法の探索を行った。細胞内の高次構造体を最初から狙うには技術的なハードルが高いため、まず、試験管内でモデル実験を行った。具体的には、相転移温度を41℃近辺に持つリポソームの二分子膜で相転移を惹起できるかどうか検証した。結果、ある特定の近赤外吸収色素をリポソーム膜に埋め込み、近赤外線照射をすると、リポソームの膜が緩み、それに伴い、リポソームの内部に内包していた色素が漏れ出すことが分かった。光熱変換色素から得られる無輻射失活エネルギーを生体分子集合体に作用させる手法の手がかりを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で、実験に参画予定の博士後期過程の学生の入国が遅れ、実験予定が遅れてしまったが、マイクロウェーブ合成装置の活用などで、当初の計画予定の遅れを取り戻しつつある。細胞内の加温については、申請当初目標として掲げていた温度変化幅10℃に達成しておらず、細胞内の場所の選択性も低いが、今までの光熱変換機能からは大幅に改善できたものと考えている。また、無輻射失活エネルギーの新たな利用法についても、脂質膜を用いたモデル系では、研究計画で提案した仮説通りの結果が得られていることから、研究計画全体の進捗としては概ね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
本申請課題の中核技術である、光熱変換色素を用いた細胞内の温度制御技術については、当初の目標値から下方修正し、できる範囲の温度変化幅で、細胞内の化学反応の熱力学解析に移行する。また、モデル実験において、無輻射失活エネルギーで脂質の相転移を誘起できることを確認できたため、今後は、そのメカニズムの解明と、脂質膜以外の生体分子集合体に適用できるかを詳細に検討する予定である。モデル実験系については、本年度の論文発表を目指す。
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