研究領域 | 分子夾雑の生命化学 |
研究課題/領域番号 |
20H04703
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北 将樹 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30335012)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞夾雑系 / N,N-ジメチルアミノピレン / ラベル支援レーザー脱離イオン化質量分析法 / 標的分子の同定 / 局在解析 |
研究実績の概要 |
蛍光基ピレンを持つ化合物は、マトリックスを使用しないラベル支援レーザー脱離イオン化質量分析法(LA-LDI MS)で選択的に励起、検出される。これまでに、従来よりも高感度でLA-LDI 法で検出できるN,N-ジメチルアミノピレン(dmpy)基を開発した。この蛍光タグを結合したタンパク質やペプチドは、簡便に精製して選択的に検出できるので、dmpy基は標的タンパク質におけるリガンドの結合位置解析に有用である。本研究では、リガンド解離型および光親和性dmpyプローブを合成し、細胞夾雑系における標的分子の効率的なラベル化と細胞内局在解析、および本手法を糖質・脂質・核酸など、様々な生体分子に応用することを目指した。 リガンド解離型プローブとして、歪みアルキンDBCOとdmpy基を活性エステル(NHS)で連結したタグを合成し、アジド基を持つ様々なリガンドとDMSO中、混合するだけでプローブが合成できる手法を開発した。ついでリガンドにビオチンを持つプローブを合成して、標的分子アビジンのK135選択的なラベル化と、そのラベル化ペプチドの選択的な検出に成功した。 さらなる応用を期待して、セリンプロテアーゼ阻害剤ベンザミジンをリガンドとして持つリガンド解離型のdmpyプローブを合成した。ベンザミジンには高極性のアミジン基が含まれ、塩酸塩として存在するためプローブ内部のNHSエステルが加水分解されることが懸念されたが、歪みアルキン・アジド間のHusigen反応の際にピリジンを添加することで、定量的にプローブが得られることを確認した。ついで標的分子であるプロテアーゼ(カリクレイン・トリプシンなど)のラベル化を検討したが、プローブの加水分解が優先し、Lys残基の特異的なラベル化は達成できなかった。今後、反応性官能基を工夫して標的酵素の選択的ラベル化と細胞夾雑系におけるラベル化を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で開発したdmpy基は多方面での応用が期待でき、本研究で目指す細胞夾雑系における選択的な標的分子の検出や同定が達成できる見込みである。進捗も順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
様々な生体分子の選択的検出を細胞夾雑系で達成するために、これまでの in vitro でのタンパク質標識に加えて、顕微鏡での観察や新たな質量分析法による観察など新しい解析法も検討し、新学術領域の推進に貢献していきたい。
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