研究領域 | 分子夾雑の生命化学 |
研究課題/領域番号 |
20H04704
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
林 剛介 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40648268)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | タンパク質化学合成 / in vitroセレクション / 人工抗体 |
研究実績の概要 |
2020年度は、(1)D体標的タンパク質およびペプチドの調製、(2)D体標的タンパク質を用いた人工抗体モノボディのin vitroセレクション、(3)人工抗体モノボディの化学合成ルートの確立、を行った。本研究の最終目的は、D体アミノ酸から構成される人工抗体を創製し、その機能を明らかにすることにあるが、D体人工抗体を取得するためにはミラーイメージin vitroセレクションを行う必要があり、そのためのD体標的タンパク質を化学的に合成する必要がある。本研究では、標的タンパク質としてヒストンを選択したが、これは、ヒストンタンパク質が敗血症の原因として注目されており、また抗ヒストン抗体が病状の緩和を促す効果が期待されているためである。(1)の成果として、ヒストンのN末端部分配列をD体としてペプチド固相合成法で合成した。またin vitroセレクションにおいてビーズ上にペプチドを固定するために、C末端側にビオチン基を導入した。(2)の成果として、我々の研究室で開発されたTRAPディスプレイを用いてD体標的タンパク質に対してin vitroセレクションを行ったところ、ヒストン由来ペプチドに結合する抗体の濃縮は確認されなかった。これはヒストン由来ペプチドが構造的に不安定(ランダムコイル構造)であるため、強く結合する抗体がライブラリー内に存在しなかった可能性がある。一方、共同研究先から提供していただいたD体MCP-1を標的としたセレクションでは、結合クローンの濃縮が確認された。(3)の成果としては、108アミノ酸からなる人工抗体モノボディを、3つのペプチド断片からPd錯体を用いたワンポットペプチド連結法によって効率的に化学合成するための合成ルートの確立を行った。同様のルートによってD体モノボディの化学合成も可能になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2020年度は2種類のD体タンパク質およびペプチドに対する人工抗体のセレクションを行うことができた。また、当初の予定以上に研究が進展し、モノボディの化学合成ルートの確立もできたため。
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今後の研究の推進方策 |
今回ヒストンのN末端部分配列に対する人工抗体は得られなかったため、αヘリックス構造をとっていると考えられるC末端領域のペプチドをD体として化学合成し、これに対してTRAPディスプレイによるモノボディの取得を行う予定である。合成標的とするヒストンC末端領域は60-90残基程度のアミノ酸長となるため、ペプチド連結反応を利用して作製する。合成後、再度モノボディの取得を試みるが、使用予定のモノボディライブラリーは改良を加え、さらに多様性を上昇させたライブラリを使用予定である。 その後TRAPディスプレイで得られた人工抗体配列を、D体配列として化学合成し(2020年度に開発したワンポットペプチド連結反応を使用)、条件検討により最適化したリフォールディング条件でモノボディの3次構造を再現する。その後標的タンパク質への結合能を評価した後、プロテアーゼに対する安定性や熱的安定性、血清中での安定性などを評価し、最終的にはD体モノボディの免疫原性について調べる。
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