2021年度は、(1)化学合成人工抗体モノボディの機能評価、(2)D体MCP-1結合モノボディのin vitroセレクションと最適化、(3)L体MCP-1結合D体モノボディの化学合成と評価、を行った。 本研究の最終目的は、D体アミノ酸から構成される人工抗体をミラーイメージin vitroセレクション法によって創製することにあるが、まずは化学合成で合成した人工抗体(本研究ではモノボディを使用)が正しくフォールディングし、標的蛋白質に結合することを確認する必要がある。そこで(1)では、2020年度に合成を完了した新型コロナウイルスSタンパク質結合モノボディの機能評価を行った。バイオレイヤー干渉法を用いて化学合成モノボディとSタンパク質の結合を調べたところ、数nM程度のKdで化学合成モノボディが結合することが明らかとなった。また化学合成モノボディは大腸菌発現モノボディ同様に、オリゴマー状態(10-12量体)で存在することがサイズ排除クロマトグラフィー分析から明らかとなった。 次に、2020年度に取得したD体MCP-1結合モノボディの結合定数が数100nMとあまり良いクローンが得られなかったため、(2)では、親和性成熟あるいは新規ライブラリによる結合能が上昇したクローンの取得を試みた。その結果、数nM程度とD体MCP-1に対して十分な結合能を持つクローンの取得に成功した。そこで(3)では、(2)で得られたクローン配列をD体アミノ酸を用いて化学合成を行った。具体的には、4つのペプチド断片からPd錯体を用いたワンポットペプチド連結法を用いて合成を完了した。得られたD体モノボディがL体MCP-1に結合することが明らかとなった。
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