今後の研究の推進方策 |
1.細胞死のメカニズム解明 ペプチド脂質の細胞内自己組織化がなぜ細胞死を引き起こすのか、そのメカニズムを調べる。まず用いる細胞種のチロシンキナーゼ活性を測定し、ペプチド脂質の毒性と細胞内チロシンキナーゼ活性に相関があることを示す(評価系既に確立済み)。このリン酸化ペプチド脂質による細胞死は、アポトーシス、ネクローシス、ネクロトーシスのいずれであるかを、各種関連酵素の阻害剤や市販のApoptotic / Necrotic assay Kitを用いて検討する。また細胞の小胞体(ER)へのペプチド脂質蓄積の有無により検証する。同時に、細胞質粘性評価を光褪色、細胞内ペプチド脂質蓄積状況等を調べる。ここでは、脂質分子が作り出す微小構造体の形成がその細胞取り込み挙動にどのような影響を及ぼすのかを明らかにし、その知見を細胞死の制御につなげる。同時に細胞内で形成するナノファイバーの動態(場所、形成スピード等)を明らかにし、細胞取り込み・細胞死との関連性を明らかにする。 2.動物実験 A431細胞を担癌したヌードマウスを用いて、ここで開発したペプチド脂質の制ガン効果を検証する。ここでは薬剤が低分子であるため、軟膏状にして患部に塗布して経皮投与を行う。具体的には既報(Mol. Pharmaceutics, 15, 955, 2018)に従い、ペプチド脂質とオリゴアルギニン、界面活性剤、イソプロピルミリステートの複合体を作製する。オリゴアルギニン(R8)は薬剤の皮膚透過性を向上させることが既に報告されている。また応募者の予備検討結果からも、R8がペプチド脂質の細胞膜透過性を向上させることが判明している。これをA431担癌マウスの患部に絆創膏を用いて塗布する。2日に一回この絆創膏塗布を繰り返し、4週間皮膚癌の成長度合いを観測する。
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