研究領域 | 分子夾雑の生命化学 |
研究課題/領域番号 |
20H04717
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藤原 慶 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (20580989)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 合成生物学 / 高分子混雑 / 細胞サイズ空間 / 細胞再構成 / 無細胞転写翻訳系 |
研究実績の概要 |
細胞サイズの空間でのみ顕在化する分子夾雑による生命システム動態変化の一般性とメカニズムについて、人工細胞と生命システム再構成系を活用することで迫ることを目的としている。この目的のため、夾雑度合や成分を制御可能である人工細胞と再構成された生命システムを用い、(1)転写翻訳系に現れる細胞サイズ空間特異的な分子夾雑効果の分子メカニズム解明、(2)細胞サイズ空間特異的な分子夾雑効果をもたらす物理化学的本質の解明、(3)細胞サイズ空間特異的な分子夾雑効果を受ける生命システムのさらなる探索、を3つの柱に研究を遂行している。本年度は(2)細胞サイズ空間特異的な分子夾雑効果をもたらす物理化学的本質の解明について大きな進展があった。(2)は、細胞内の時空間パターン決定システム(Min波)の動態に対する影響を解析した。Min波は一定濃度以上の細胞抽出液が存在しない場合、人工細胞内では機能しない。この細胞抽出液はBSAに置き換えることが可能であり、一種の場の触媒として作用している。そこで細胞抽出液に対して陰イオン交換、ゲルろ過による分子量分画を行い、Min波に与える影響を解析したところ、分子量とは関連があるものの、電荷とは関係がないことが示唆された。そこで、細胞抽出液に豊富に存在する解糖系酵素や他の機能タンパク質を精製し、細胞抽出液の代わりに使用したところ、約半数のタンパク質がMin波を発生させる場の触媒となった。また、これらの場の触媒となるタンパク質の必要重量濃度は分子量サイズと相関を示した。このことは、大きなタンパク質ほど場の触媒作用が高いことを示唆した。GFP融合によってこれら場の触媒となるタンパク質を解析したところ、弱い相互作用によって自発的に膜に局在することが示唆された。これらの自発局在は生細胞内では消失していることから、分子夾雑環境では弱い相互作用が顕在化するための強度閾値が存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の想定より早く細胞サイズ空間特異的な分子夾雑効果の一般則に関する重要な知見を得たため。
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今後の研究の推進方策 |
Min波を題材とした細胞サイズ空間特異的な分子夾雑効果の理解はひと段落ついたため、今後は解糖系や転写翻訳系といった他の生命システムに対して同様の解析を行い一般則に迫る。
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