研究領域 | 分子夾雑の生命化学 |
研究課題/領域番号 |
20H04718
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
越山 友美 立命館大学, 生命科学部, 准教授 (30467279)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人工チャネル / 金属配位 / 夾雑脂質膜 / アンフォテリシンB |
研究実績の概要 |
チャネル蛋白質による膜を介したイオン輸送は、細胞活動において重要な役割を果たしており、それらを模倣した人工チャネルが多数報告されている。人工チャネルは、細胞活動を制御する分子ツールとしての利用が期待されるものの、従来の研究では、チャネル分子の自己集積化に水素結合などの弱い非共有相互作用が用いられており、加えて単一から数種類の脂質成分から成る単純化された人工膜での評価に留まっている。そこで本研究では、チャネル分子の自己集積化の駆動力として金属配位結合を利用した人工チャネル分子を設計・合成し、酵母やE. Coliなどから抽出した天然の脂質膜におけるチャネル形成メカニズムの解明に取り組んだ。まずは、抗生物質の一種であるアンフォテリシン B (AmB) に金属配位部位を修飾した金属ハイブリッドチャネル分子を設計・合成し、単一成分からなる脂質膜と、複数の脂質成分からなる夾雑な脂質膜におけるイオン透過能を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属配位変化を利用したチャネル分子の集積状態制御を目指し、抗生物質の一種であるアンフォテリシン B (AmB) に金属配位部位としてビピリジン (bpy) を修飾した金属ハイブリッドチャネル分子 bpy-AmB を設計・合成し、その金属配位に伴う集積状態制御とイオン透過能について発表した (Chem. Commun., 2021)。特に、Cu2+イオンとbpy 配位子との錯形成では、pH < 8 では単核錯体、pH 8-12 では二核錯体を与え、pHに依存して配位構造が大きく異なる。Cu2+イオン存在下、pH 7.0 とpH 9.0 における bpy-AmB のカルシウム透過能は、pH 7.0に比べて pH 9.0 では大幅に向上し、金属配位が自己集積化の制御に有用であることを示した。加えて、単一成分からなる脂質膜と、複数の脂質成分からなる夾雑脂質膜(大腸菌から抽出した脂質)を用いて、HPTSを指示薬としてアルカリ金属イオンの透過能を評価したところ、単一脂質膜と夾雑脂質膜で透過能に違いが見られ、現在チャネル透過能と集積状態との関係について解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は前年度に引き続き、単一脂質膜と夾雑脂質膜を用いてHPTSを指示薬としたアルカリ金属イオンの透過能評価を進める。夾雑脂質膜としては、大腸菌から抽出した脂質に加えて、酵母や大豆から抽出した天然由来の脂質も用いる。さらに共同研究によりシングルチャネル活性測定を実施し、チャネルサイズなどのより詳細な分析を進める。透過能評価と並行して、吸収スペクトル、円偏光二色性スペクトル、赤外吸収スペクトルの経時変化測定により、錯形成反応とハイブリッドチャネル分子の集積状態変化を追跡し、動作機序の解明を推進する。新たな金属ハイブリッドチャネル分子として、水中で様々な遷移金属へ配位可能なフェナントロリンやカテコールを修飾したハイブリッドチャネル分子の合成にも取り組む。
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