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2020 年度 実績報告書

輻射流体計算で解き明かす初期宇宙の高密度星団形成

公募研究

研究領域重力波物理学・天文学:創世記
研究課題/領域番号 20H04724
研究機関筑波大学

研究代表者

矢島 秀伸  筑波大学, 計算科学研究センター, 准教授 (10756357)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード銀河形成 / 輻射輸送 / 数値シミュレーション / 初代星 / 星団形成
研究実績の概要

近年観測された重力波の起源となる連星はいつ頃どのように形成されたのか? この疑問に答えるべく本研究では、大規模な宇宙論的流体シミュレーションと高精度輻射流体計算によって、多数の初代星ミニハローの形成から、初代銀河中の星団形成までを明らかにする事を目標としている。当該年度では、低金属度分子雲内での星団形成過程を明らかにした。シミュレーションは適合格子法を使った流体計算コードSFUMATOに、非平衡化学反応、輻射輸送を実装し、高精度な星団形成シミュレーションを実現した。これにより、分子雲の質量、密度、金属量と星形成効率の関係を定量的に明らかにした。結果として、ガス表面密度が約100太陽質量/pc^2以上の場合に、重力的に束縛した星団が形成される事が分かった。重力的に束縛された星団は、その後の重力多体相互作用を経て大質量星が中心付近に移動する可能性がある。この際に、大質量星の連成系を形成する可能性があり、重力波源となりうる。本計算によって、分子雲の性質と重力波源形成の関係を繋ぐための鍵となる星団形成を明らかにすることが出来た。
また、宇宙論的輻射流体シミュレーションにより、初代星ミニハローから金属汚染された初代銀河形成までを調べた。初代星連星も重力波源になりうるため、宇宙論的な体積における平均的な初代星形成率は重力波の頻度を調べる上で重要である。結果として、赤方偏移15程度で初代星形成は止まり、初代銀河で低金属度の星が作られる事が分かった。また、初代星の形成率、初代銀河の性質は初代星の初期質量関数に強く依存する事が分かった。top-heavyな初期質量関数の場合は、対不安定型超新星の影響により、大規模スケールで金属汚染が進む。しかしながら、効率的な超新星フィードバックにより、初代銀河内部と周囲のガス密度は大きく下がり、初代銀河内の星形成は大きく阻害されることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画として、まず分子雲における星団形成、そして宇宙論的輻射流体による初代星形成の統計的性質を明らかにする事を目標としていた。重力波源としては高密度星団と初代星連星が考えられている。高密度星団は重力多体相互作用によって大質量星が中心へと移動し、連星系を形成する事が予想されている。しかし、重力的に束縛している高密度星団は観測的に珍しい事が知られており、どのような条件で形成されるのかは分かっていなかった。一方、初代星も典型的質量が大きいことから、連星になった場合、大質量星の連星になることが期待されている。しかしながら、初代星の直接観測がこれまで無いため、初期宇宙で初代星形成率がどのような値だったのかは未解明である。これらを直接探るための、大規模な数値シミュレーションを計画していた。
当該年度では、当初の計画通り、分子雲内の星団形成過程、宇宙論的な初代星形成に関して大規模数値シミュレーションを遂行する事が出来た。研究では、数値計算コードの開発及び大規模並列計算が必要だったが、順調に計算を終了し、論文へとまとめる事が出来た。結果として、重力的に束縛した星団を形成する分子雲の条件を見いだすことが出来た。また、初代星の星形成率密度の赤方偏移進化も直接示す事に成功した。したがって、研究は当初の予定通り順調に進展している。

今後の研究の推進方策

これまで、計画通り星団形成と初代星の大規模数値シミュレーションを実行する事が出来た。しかし、これらから重力波源のブラックホール連星の形成率を議論するためには、計算サンプルを増やして統計量を調べる必要がある。したがって、今後としてはまずは計算サンプルを50個程度まで増やして、高密度星団形成の条件に関して詳細に調べていく。また、初代星形成に関しては、これまでの研究で初代星の性質がその後の初代銀河の物理的性質に大きく影響する事を見いだした。初代銀河はジェームスウェッブ宇宙望遠鏡などの次世代望遠鏡のメインターゲットの一つである。したがって、多数の宇宙論的シミュレーションにより、初代銀河のサンプルを増やすことで、次世代望遠鏡観測を使って、初代星の性質をどのように制限出来るか定量的に明らかにしていく。その後、宇宙論的シミュレーションと星団形成シミュレーションを連結させて統合的なモデル化を行う。具体的には、宇宙論的シミュレーションによって、初代星から初代銀河形成までを計算し、初代銀河内で作られる分子雲を調べる。この分子雲を初期条件として星団形成の計算を行う事で、より現実的な初期条件での計算に昇華する事が出来る。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] エディンバラ大学(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      エディンバラ大学
  • [国際共同研究] カナリア天体物理研究所(スペイン)

    • 国名
      スペイン
    • 外国機関名
      カナリア天体物理研究所
  • [雑誌論文] Star cluster formation and cloud dispersal by radiative feedback: dependence on metallicity and compactness2020

    • 著者名/発表者名
      Fukushima Hajime、Yajima Hidenobu、Sugimura Kazuyuki、Hosokawa Takashi、Omukai Kazuyuki、Matsumoto Tomoaki
    • 雑誌名

      Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

      巻: 497 ページ: 3830~3845

    • DOI

      10.1093/mnras/staa2062

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Starbursting [Oiii] emitters and quiescent [Cii] emitters in the reionization era2020

    • 著者名/発表者名
      Arata Shohei、Yajima Hidenobu、Nagamine Kentaro、Abe Makito、Khochfar Sadegh
    • 雑誌名

      Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

      巻: 498 ページ: 5541~5556

    • DOI

      10.1093/mnras/staa2809

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] The CO universe: modelling CO emission and H2 abundance in cosmological galaxy formation simulations2020

    • 著者名/発表者名
      Inoue Shigeki、Yoshida Naoki、Yajima Hidenobu
    • 雑誌名

      Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

      巻: 498 ページ: 5960~5971

    • DOI

      10.1093/mnras/staa2744

    • 査読あり
  • [学会発表] 銀河形成研究に対する理論側からの提言2021

    • 著者名/発表者名
      Hidenobu Yajima
    • 学会等名
      南極THzワークショップ
  • [学会発表] A method to constrain black hole models using ratios of line emission2021

    • 著者名/発表者名
      井上茂樹; 松尾宏; 吉田直紀; 矢島秀伸; 森脇可奈
    • 学会等名
      Galaxy Evolution Workshop 2020
    • 国際学会
  • [学会発表] モーメント法を用いた輻射流体シミュレーションによる星団形成の解明2021

    • 著者名/発表者名
      福島肇; 矢島秀伸
    • 学会等名
      日本天文学会2021年春季年会
  • [学会発表] 銀河形成シミュレーションのブレイクスルーと今後の展開2020

    • 著者名/発表者名
      Hidenobu Yajima
    • 学会等名
      第33回 理論懇シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] Radiation-hydrodynamic simulations of star clusters in GMCs2020

    • 著者名/発表者名
      Hidenobu Yajima
    • 学会等名
      Gravitational wave physics and astronomy: Genesis 4th annual symposium
    • 国際学会
  • [学会発表] 星団形成における輻射フィードバックについて2020

    • 著者名/発表者名
      福島肇; 矢島秀伸; 杉村和幸; 細川隆史; 大向一行; 松本倫明
    • 学会等名
      日本天文学会秋季年会

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公開日: 2021-12-27  

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