研究領域 | 重力波物理学・天文学:創世記 |
研究課題/領域番号 |
20H04730
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 尚孝 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任助教 (20722804)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 重力波 / 近接連星 / 白色矮星 / Ia型超新星 / 暗黒エネルギー / 背景重力波 |
研究実績の概要 |
本研究では、天の川銀河系内で重力波源となりうる白色矮星を含む近接連星を統計的に探し出すことである。近接連星は、微弱ながら重力波を放出することが知られており、将来のスペースからの重力波観測を立案する上でも、どれくらいの数の近接連星が天の川銀河に存在するかを知ることは重要である。また、白色矮星連星は、暗黒エネルギーの精密測定に使われているIa型超新星の母天体と考えられているが、白色矮星同士の連星なのか、白色矮星と主系列星の連星なのが、数十年に渡って議論され、決着がついていない。天の川銀河内で、母天体候補を統計的に探し出すことが肝要である。 本年度のタスクは、候補天体リスト作成とFollow-up 観測の遂行である。これまで蓄積されたデータアーカイヴから候補天体絞り出し、分光観測を実行することである。欧州の位置天文衛星GAIAのEDR3のデータを精査し、連星の軌道半径の大きいもの(1000天文単位)から、小さい方向への分布を調査し、近接連星の分布について、推定することが可能となった。また、Pan-Starrs、DECamの最新のデータとも組み合わせ、候補天体リストを作成することができた。確度の高い天体については、分光観測で確かめる予定であるが、新型コロナ感染症の影響もあり、望遠鏡が稼働していなかった時期もあり、また天候にも恵まれず、観測計画は遅れているが、いくつかの天体については分光観測することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、候補天体を探しだした。既存のデータアーカイヴを組み合わせることにより、これまで知られていなかった候補リストを作成することができた。まず、欧州の位置天文衛星GAIAのデータから近傍の白色矮星とその近傍にある星のリストを作成した。ただし、このリストは連星として軌道確定ができていないものは除外されているので、完全ではないものの、軌道半径が大きなものの分布を知ることができ、内挿することにより、軌道半径が小さいものの分布を推察できるようになった。分光観測は、望遠鏡時間の確保はできていたが、前半は新型コロナ感染症、COVID-19の影響で、望遠鏡が稼働していない時期があり、予定通りには進まなかった。すばる望遠鏡で1天体、NTT望遠鏡で1天体観測、分光観測を遂行することができたが、予定していた数十天体には遠く及ばない。来年度には分光観測を積極的に進めていきたいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に得られた近接連星の候補リストについて、別のデータアーカイヴとあわせて、候補を絞っていき、追跡観測を推進していく予定である。具体的には、Zwicky Transient Survey (ZTF)が夏に予定しているデータリリース6から微弱な変光天体の情報を加え、Sloan Digital Sky Survey のスペクトル変動と合わせる。また、これまで Pan Starrs-I のデータアーカイヴを主に利用してきたが、すばる望遠鏡 Hyper-Suprime Camの撮像範囲も広がってきたので、これまで見えなかった近接連星を分解して見ることができる例がいつくかある。DECam Legacy Survey (4m望遠鏡)もデータを蓄積しており、これらの新しいデータも積極的に活用し、より確度の高い候補天体について、大型望遠鏡の望遠鏡時間を獲得し、解析を進めていく。
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