公募研究
本研究は,データを説明する特徴量が類似したもの毎に分類する機械学習やそれを発展させた深層学習を,物理現象における観測波形のパラメータ推定に適用し,波形を特徴付けるパラメータの抽出に適した特徴量空間抽出方法ー信号変換方式の組み合わせを見出すことにより,クラス分類に対応したパラメータ推定手法の開発を行う.本研究を行うにあたり,1)観測波形の信号変換方式,および前処理とパラメータ推定の関係,2)深層学習モデルを用いたパラメータ推定手法の開発および評価である.1)の観測波形の信号変換方式については,短時間フーリエ変換とウェーブレット変換の2種について試行したが,両者について大きな違いは見られなかった.また,前処理として,ノイズ処理とレインボーグラム/スペクトログラム入力が考えられる.ノイズ処理については,特に突発性ノイズがパラメータ推定に困難さを与えるが,教師なし学習に基づいた突発性雑音の分類システムの提案を行った.Gravity Spyで用いられた突発性雑音データへの適用を行い,一定の成果を得た.前処理については,位相情報まで含めたレインボーグラムで処理する方がスペクトログラムでの処理と比べ,パラメータ推定には若干優位な結果があった.2)については,一連の結果を踏まえ,CNN の中でも画像処理で標準的に用いられるVGG16をベースとし,charp型信号を,開始周波数・終了周波数・開始時刻・信号継続時間・線形部の傾き・SNRで近似し,これらをパラメータとした疑似データを30000個ほど用意し,CNNの学習に用いた.その結果得られたモデルに対して,前処理(ノイズ処理,信号変換)を行った観測データを実際に用いてパラメータ推定を行うための一連のフローを開発した.
2: おおむね順調に進展している
2020年度は,COVID-19の影響により海外渡航ができなかったうえに計算用のハードウェアの性能限界の壁があり,新たにハードウェア調達を行う必要があったことから,この点については若干の遅れはあった.しかし,それ以上に観測波形の信号変換方式の評価・有益な前処理についての評価・パラメータ推定手法第一案の開発が行え,学会発表6件を行えたことから,概ね順調な進捗である.
次年度の進捗へ向け,ハードウェアの調達を行うとともに,開発したパラメータ推定手法を実データへ適用し,その性能評価を行う.また,脳波など似た時系列データを用いて,重力波以外のデータに対してもパラメータ推定等適用可能かを検討する.
すべて 2022 2021
すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)