研究実績の概要 |
重力波天文学の幕開けによりブラックホール合体・中性子星合体イベントが検出され始め,今後その検出頻度は一層増加すると予想される. これらの母天体は大質量星連星であり, その形成機構を明らかにすることは重力波観測で得られたブラックホール・中性子星の性質から,その連星系の形成機構に制限をつけるために重要である. さらに重力波源の母銀河を同定することは, 母銀河を用いた宇宙論パラメター・重力波伝播速度への制限から銀河進化モデルへの制限に至るまで重力波天文学の広範な分野に重大なインパクトをもたらす. しかし低金属量環境(中・高赤方偏移銀河) で大質量星連星の母体となっている大質量分子雲・コアが形成される条件は,まだ理解されておらず, また今後 10 年ほどの重力波望遠鏡群単独では母銀河を特定できる空間分解能を達成することも難しい. そこで本研究では低金属量環境下での大質量分子雲コアの形成条件をシミュレーションから明らかにし, さらに母銀河の性質との関係を明らかにすることで, 連星系形成機構の解明に貢献し, 将来観測での母銀河を用いた精密なパラメタ制限などへの道筋をつけることを目標としている. 本年度は形成初期段階の分子雲について,星間ガス衝突流計算を進めた.特に太陽金属量から0.2太陽金属量程度の範囲の銀河環境において,分子雲の乱流構造と密度構造が結合しながら進化する様子を明らかにすることができた.
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