研究領域 | 重力波物理学・天文学:創世記 |
研究課題/領域番号 |
20H04743
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
岩切 渉 中央大学, 理工学部, 助教 (50749918)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中性子星 / 定常重力波 / 飛翔体観測 / X線 |
研究実績の概要 |
当該年度における研究成果の一つとして、COVID-19による遅れはあるものの、6U CubeSat(10 x 20 x 30 cm)の超小型衛星NinjaSatに搭載する、小型ガス検出器のセンサー部、アナログ回路部、およびデジタル回路部のエンジニアリングモデルの製作および性能評価、また熱真空などの環境試験、高エネルギー加速器研究機構のフォトンファクトリーを利用した検出器の性能評価試験、そして一部の搭載機器のフライトモデルの製作を行うことができた。 本研究費は主に目標天体以外からのX線の漏れ込み(宇宙X線背景放射など)を防ぐために必要となる、小型の金属コリメータの製作に用いた。このコリメータの材質にはステンレス(SUS304)を採用し、まず50 um厚で穴径600 um、桟が100 umのハニカム構造をした薄いメッシュを300枚製作し、それを拡散接合によって一体化してから形を整えることで、高さが1.5 cm、直径7 cm、重さ160 gの小型かつ軽量な金属コリメータの製作に成功した。X線イメージから求めた開口率は、理想値が74%に対して69%を達成することができた。 国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されているMAXIとNICERの連携に関しては、ISS上のPCを介してMAXIの突発天体情報を直接NICERに伝達するルートの開発を進めており、2022年度の運用を目指して現在NASAと協力しながらISS軌道上のソフトウェアの開発を進めている。地上経由での突発天体情報を伝える試みに関しては、MAXIで突発現象を発見後、70分でNICERの観測を始めることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、COVID-19の影響によって人や物の動きが制限された結果、NinjaSat計画に関しては、2021年度中の打ち上げから2022年度中の打ち上げへとスケジュールが遅れている。ただし、LIGO-VIRGO-KAGRAのO4観測の開始時期も同様に遅れているため、さそり座X-1の地上重力波観測装置とNinjaSatの同時観測という点では、スケジュールの遅れは大きなインパクトにはなっていないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、NinjaSat計画に関しては、2022年の打ち上げを目指し、引き続き衛星搭載機器のフライトモデルに対する製作し、フライトモデルと同等のフライトスペア品を使って加速器施設においてX線照射試験を行い、検出器の有効面積や入射X線位置の位置依存性の性能評価や、任意の時間でX線を発生できるX線発生装置を用いて中性子星の自転周期を検出するのに重要な時刻付の較正試験を行う。 MAXI-NICER連携においても、ISS内部での情報伝達ルートを介した即応観測を引き続きNASAのNICERチームと協力して進めていく。COVID-19の影響で、実際に渡米するのは難しい状況であるものの、密にリモートでの打ち合わせをおこない、2022年度からの観測開始を目指し、開発を進めていく。
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