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2020 年度 実績報告書

修正重力理論におけるブラックホール摂動と重力波

公募研究

研究領域重力波物理学・天文学:創世記
研究課題/領域番号 20H04746
研究機関立教大学

研究代表者

木村 匡志  立教大学, 理学部, 助教 (00844763)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワードブラックホール / 重力波 / 重力摂動 / 修正重力
研究実績の概要

2020年度の研究成果は次の通りである。
・ブラックホール形成時に放出される重力波は凖固有振動で特徴づけられることが知られている。論文 [Phys.Rev.D.102.044032,2020] においてゆっくり回転する場合のKerrブラックホールの凖固有振動の解析的な表式を導出した。これにより特に磁気量子数が異なる凖固有振動の関係が明示的に示された。また数値計算との結果を比較して回転が小さいケースは非常によく再現することを見た。本研究成果は修正重力理論における回転ブラックホールへと議論を拡張するための第一歩として重要である。
・超弦理論から示唆される修正重力理論における回転ブラックホール解を調べ、ゆっくり回転するクラスにcircularity conditionと呼ばれる条件を破る解がないことを摂動的に示した[Phys.Rev.D.102.084021,2020]。circularity conditionの破れがもし見られるとそれは一般相対性理論の破れを強く示唆しているが、今回調べたクラスの重力理論ではそのようなことが起きないことを意味している。
・2次元反ドジッター時空におけるアレタキス不安定性と呼ばれる現象について、幾何学量として何が発散するのかを示し、また時空の共形対称性に付随した昇降演算子を用いてこの不安定性と関連したアレタキス定数を導出出来ることを示した [Phys.Rev.D.103.064011,2021]。2次元反ドジッター時空は最大回転しているブラックホールの付近などに現れるため、そのような時空の上の波動現象を理解することに繋がると考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

修正重力理論の検証へ向けて、修正重力理論における回転ブラックホールの凖固有振動を調べることが目標の1つであるが、そのための第一歩として研究成果を出すことが出来ている。また、修正重力理論の研究においては、従来はcircularity conditionと呼ばれる条件が課されて回転ブラックホールを調べることが多かったが、その是非をきちんと調べている研究はなかった。また、circularity conditionの破れが観測的に明らかになったならば、一般相対性理論の破れを強く示唆しているため、現実的な重力理論においてcircularity conditionの破れが起きるかどうかを調べることが重要となる。本年度の成果はこの問に対して答えており、修正重力理論においてどのようなクラスの回転ブラックホールを考えればよいかの指針を出すことへ繋がる成果と考えている。論文[Phys.Rev.D.103.064011,2021]の成果は高速回転するブラックホールの付近の波動現象の理解へ繋がる成果である。

今後の研究の推進方策

・修正重力理論における回転ブラックホールの凖固有振動(QNM)を求める。私の先行研究で修正重力理論における球対称ブラックホールの場合のQNMを議論していたが、実際に観測されるブラックホールは回転していると考えられるため、実験との比較を行うために回転しているケースへと議論を拡張する必要があった。しかしながら、修正重力理論では、重力波の基礎方程式が変数分離せず、また複数の物理的な自由度が独立ではなくなるため、議論が非常に困難であった。本研究では、ブラックホールの回転が小さい場合には、これらの困難が解決される可能性を探り、特にHatsuda and Kimura (2020) の結果を拡張することで、この問題へ取り組む予定である。最近、いくつかの修正重力理論で、同様の計算が行われており、それらの結果を含む一般的な成果を出すことを目標とする。
・修正重力理論が一般相対性理論からの小さい補正として表される場合に補正項がQNMに与える影響を議論する。QNMの計算は、量子力学における束縛状態のエネルギー固有値を求めることと対応していることが知られており、これを応用して最近 Hatsuda(2019)で効率のよい計算方法が提案されている。本研究では、量子力学における摂動論的なアプローチに着目することで、修正重力理論の補正項の影響を議論するための手法を開発する。
・修正重力理論として、一般相対性理論に近いクラスを考えることは、現在の重力波観測が一般相対性理論と無矛盾であるということからも自然である。そのようなクラスの理論を一般論の立場から考え、またブラックホール解や重力摂動を調べる予定である。特に凖固有振動や安定性に関して議論を行う。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Revisiting the Aretakis constants and instability in two-dimensional anti-de Sitter spacetimes2021

    • 著者名/発表者名
      Katagiri Takuya、Kimura Masashi
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 103 ページ: 064011-1, 11

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.103.064011

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Semi-analytic expressions for quasinormal modes of slowly rotating Kerr black holes2020

    • 著者名/発表者名
      Hatsuda Yasuyuki、Kimura Masashi
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 102 ページ: 044032-1, 11

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.102.044032

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Towards rotating noncircular black holes in string-inspired gravity2020

    • 著者名/発表者名
      Nakashi Keisuke、Kimura Masashi
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 102 ページ: 084021-1,13

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.102.084021

    • 査読あり
  • [学会発表] Parametrized black hole quasinormal ringdown2021

    • 著者名/発表者名
      木村匡志
    • 学会等名
      The Fourth annual symposium of the innovative area "Gravitational Wave Physics and Astronomy: Genesis"
    • 国際学会
  • [学会発表] 定常降着がある場合のブラックホール時空2021

    • 著者名/発表者名
      木村匡志
    • 学会等名
      日本物理学会 第76回年次大会
  • [学会発表] Parametrized black hole quasinormal ringdown2021

    • 著者名/発表者名
      木村匡志
    • 学会等名
      The 4th workshop on "Mathematics and Physics in General Relativity"
    • 招待講演
  • [学会発表] Semi-analytic expression of quasinormal modes for slowly rotating Kerr black holes2020

    • 著者名/発表者名
      木村匡志
    • 学会等名
      日本物理学会 2020年秋季大会
  • [学会発表] Parametrized black hole quasinormal ringdown2020

    • 著者名/発表者名
      木村匡志
    • 学会等名
      AAPPS-DACG Workshop on Astrophysics, Cosmology and Gravitation
    • 国際学会
  • [学会発表] Parametrized black hole quasinormal ringdown2020

    • 著者名/発表者名
      木村匡志
    • 学会等名
      online JGRG workshop 2020
    • 国際学会

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公開日: 2021-12-27  

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