2022年度は、査読付き論文を7本発表し、外部での講演を14回行った。その中でも、論文1)において、原始ブラックホール連星の合体からのシグナルを空間的に相関させることで、天体ブラックホール連星の合体のシグナルと区別するアイデアを提案した。また、論文 3)では、原始ブラックホールの生成する新しいインフレーションモデルを提案している。原始ブラックホールは、ダークマターの有力な候補である。我々はこの論文において、Starobinsky-Higgsのmulti-fieldインフレーションモデルにおいて、tachyonic prehearingが起こり、小スケールのゆらぎが増幅され原始ブラックホールが作られることを指摘した。また、論文 6)において、インフレーション直後に現れたと期待されるインフラトンの振動による物質優勢期において、原始ブラックホールが作られる機構に新しいプロセスを発見した。原始ブラックホールを作ると期待される密度ゆらぎの中でもsmall scaleの密度ゆらぎが、先にvirializationすることにより原始ブラックホールの生成を抑制してしまうのである。この論文では、それを避けるための条件を詳しく調べた。特に、この論文 6)の成果は、私がライフワークとして行ってきてきた宇宙初期の物質優勢期における原始ブラックホールの形成条件の総まとめとなっている。これらのことは、今回の「原始ブラックホールで探る新しい宇宙論」のプロジェクト研究における極めてオリジナリティーの高い成果であり、この分野の世界の研究を主導するものである。
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