研究実績の概要 |
植物の成長に有益な効果をもたらし、植物と共生関係にある内生菌(エンドファイト、endophyte)の存在が明らかとされ、様々な研究がなされてきた。その一例として、共生菌の一種、Veronaeopsis simplexと共生関係を結んだトマトは、本来トマト幼苗が生育できない低pH条件でも通常の生育を示す。本菌は培地上で暗色(Dark)のコロニーを形成し比較的生育が遅く、菌糸に隔壁(Septa)があることから、Dark Septate Endophytic fungus (DSE)に属する菌として知られており、根部に感染し植物に対して有益な効果を示す。他のDSE菌、 Heteroconium chaetosnira, Phialocephala fortiniiの存在も知られ、その効果が実証されている。しかしながら、『どうしてエンドファイトは植物に排除されずに感染できるか?』、『共生したエンドファイトは植物に如何にして劣悪環境突破力をあたえるのか?』については未だ不明なところが多い。本研究ではP. fortiniiの培養濾液より新規な化合物、8-hydroxy-6-methoxy-3,7-dimethyl-1H-2-benzopyrpyran-1-oneを単離し、植物に対する活性として内生のABA含量を増加させる生物活性を見出した。また、我々が主題として取り組む糸状菌由来の生理活性物質、セオブロキシドに、内生菌の感染量を増加させる活性を見出した。感染量を増加させる生理活性の発現には、内生のABA含量増加に伴う、PR1遺伝子の転写量の低下が起因しているであろうとの結果を得た。また、植物と内生菌が共生関係を結ぶ際に重要な役割が想定されているジャスモン酸の類縁体の生合成に関して、新たな知見を得た。
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