公募研究
ネコはマタタビを見つけると、葉を舐めたり噛んだり、葉に顔や頭をこすり付けたり、葉の上で体をくねらせゴロゴロ転がる、といった特徴的な反応を示す。これは、ネコのマタタビ反応と呼ばれる。1950年代には、マタタビからイソイリドミルメシンやジヒドロネペタラクトンといったイリドイド化合物群がネコに反応を誘起する活性物質であると報告された。長い間この反応は、ネコが植物に陶酔して喜んでいるだけと考えられていたが、この特異な反応をネコだけでなくライオンなど大型ネコ科動物も示すことを考慮すると、1000万年以上前に存在した現存するネコ科動物の共通祖先が既に植物イリドイドに対する反応機構を獲得していたと推測できる。陶酔して転がるだけの反応なら、各ネコ科動物が1000万年もの間、この反応機構を受け継いできたとは考えにくい。我々は、この反応に何かネコ科動物の生存に関わる重要な意義があるに違いないと考え、ネコのマタタビ反応の研究を始めた。その結果、ネペタラクトールという過去にマタタビから見逃されていたイリドイドが、最も強力なマタタビ反応を誘起することを見出した。ネペタラクトールは蚊の忌避活性も有し、ネコがマタタビに反応して葉に体を擦り付けるとネペタラクトールが被毛に付着して蚊に刺されにくくなることを見出した。つまりネコのマタタビ反応は、植物イリドイドを利用して病原体を媒介する害虫から身を守る防御行動であることが分かった。さらにネコによる舐め噛みにより葉が傷つくことで、ネペタラクトールとマタタビラクトン類の放出量が増加するとともに、これらの成分の組成比も大きく変わることが分かった。この組成比の変化により、ネコのマタタビに対する反応性および蚊に対する忌避活性が増強した。以上の研究結果は、ネコがマタタビに含まれている蚊の忌避成分を最も効果的に利用できるように巧みに進化してきたことを示していると考えらた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
iScience
巻: In press ページ: In press
10.1126/sciadv.abd9135
Science Advances
巻: 7 ページ: eabd9135
10.2139/ssrn.4029065
http://www.liverpool.ac.uk/mbe