医薬などへの応用される低分子化合物は、天然物や合成化合物を中心に活発に研究されてきました。低分子は合成が容易で、比較的製造コストが低く、経口吸収性など生体への投与に適した性質を持っています。一方で、生体高分子に比較すると分子サイズが小さいため、生体分子に結合した場合に十分な阻害活性を示さないことが問題になります。これら低分子の長所を生かし、短所を低減する高機能な新規分子の開発が必要です。 低分子の生体高分子のバインダーとしての機能を利用し、別の構造ユニットと組み合わせる高次化の試みがなされています。例えば、PROTACと呼ばれるデグレーダーは、分解をもたらすタグと標的選択性を担うユニットからなります。標的分子を分解することによって、siRNAのようなノックダウン効果をもたらします。 本研究では、デグレーダーへの利用を念頭に低分子化合物の研究を実施しました。 タンパク質凝集体は神経変性疾患などの典型的な表現型です。細胞質のタンパク質は、相分離し液滴を形成する場合があり、生成した液滴はメンブランレスオルガネラとして機能する一方で、徐々に固化して凝集体を形成します。そこで、疾患に関わるタンパク質を選び、細胞内での相分離条件を検討しました。また、生じた液滴に対して結合する分子の探索を行いました。今後は、これらタンパク質の分解に向けて複数の化合物を組み合わせたデグレーダーの設計に移行する予定である。
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