研究領域 | 化学コミュニケーションのフロンティア |
研究課題/領域番号 |
20H04762
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鬼塚 和光 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (00707961)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | RNA / 大規模解析 / 結合分子 / 反応分子 / 高次構造 |
研究実績の概要 |
近年、RNA高次構造を標的とした創薬が注目されている。しかしRNAは多数の類似した構造を形成するため、強い結合性と高い選択性を併せ持つ優れたRNA結合性小分子の開発は難しい。そのため、標的特異的結合分子を創出する優れた評価法・探索法の開発が強く望まれている。これまでに我々は、RNA-小分子間相互作用を大規模に解析する技術を開発してきた。この解析法により、固相に固定化した一つの小分子に関して、一度の測定で、数千~数万のRNA配列を親和性の高い順にランク化することが可能になった。本研究ではこの手法を①RNA結合小分子のハイスループット探索システムへ展開すること、②アルキル化反応性のランク化に展開することの2点を目的に研究を進めている。 研究①:蛍光指示薬の探索・活用:蛍光指示薬情報の多様化を目指し、蛍光OFF-ON型のインターカレーターとして知られているチアゾールオレンジ(TO)、天然物のインターカレーターであり蛍光性G4構造結合分子として知られるベルベリン誘導体、ループ構造中のグアニン塩基(G)を認識し蛍光変化するG-clamp、これら3種類を検討する小分子として合成した。RNAライブラリはpre-miRNAおよび疾患に関与するリピート配列、ウイルス配列から抽出したモチーフ構造によって構成した(3000高次構造、15000配列)。実際にそれら化合物のRNAに対する親和性をランク化することに成功した。 研究②:アルキル化反応への展開:独自に開発したビニルキナゾリノン(VQ)ユニットは、その安定前駆体であるSPh体と平衡状態で存在しており、近傍にUが存在すると速やかに反応する。このVQユニットを本大規模解析法に適用させ、アルキル化反応効率のランク化を行った。実際にアクリジンを結合分子とした反応剤を用いて反応性のランク化に成功し、疾患に関連する新たな標的を見出すことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究①:蛍光指示薬の探索・活用:蛍光指示薬情報の多様化を目指し、蛍光OFF-ON型のインターカレーターとして知られているチアゾールオレンジ(TO)、天然物のインターカレーターであり蛍光性G4構造結合分子として知られるベルベリン誘導体、ループ構造中のグアニン塩基(G)を認識し蛍光変化するG-clamp、これら3種類を検討する小分子として合成した。実際にそれら化合物のRNAに対する親和性をランク化することに成功した。加えて、最初に設計した他の化合物の合成、追加の分子の合成も進んでおり、おおむね順調に進展しているといえる。 研究②:アルキル化反応への展開:独自に開発した反応素子VQユニットを本大規模解析法に適用させ、アルキル化反応効率のランク化を行った。実際にアクリジンを結合分子とした反応剤を用いて反応性のランク化に成功し、疾患に関連する新たな標的を見出すことに成功した。技術的な要素は確立できたので、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、我々が確立したRNA-小分子間相互作用大規模解析技術のさらなる展開を目指し、以下2点の達成を目指す。 研究①:蛍光指示薬の探索・活用:現在得られた蛍光指示薬結合性情報をもとに、疾患に関連する配列を選び、蛍光指示薬競合置換アッセイを行う。数百の化合物ライブラリからアッセイを始め、系が確立できれば、徐々に化合物ライブラリの規模を拡大する。期間内にヒット化合物の取得を目指す。ヒットした化合物は再度、大規模解析技術によりその選択性を確認する。併行して、異なるタイプの蛍光指示薬を合成し、更なる蛍光指示薬情報の多様化を目指す。 研究②:アルキル化反応への展開:現在得られたアクリジンの情報に加えて、ベルベリンやG-clampなど様々な結合分子と反応素子VQをコンジュゲートし、情報の収集を行う。VQ以外の反応素子の情報取得も目指す。
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