近年、RNA標的創薬はオリゴ核酸に加え、経口投与可能な小・中分子でも効果を期待できる標的が増え、飛躍的に進展している。しかし、RNAへ選択的に結合する分子構造は限られていることから、新たなRNA結合分子解析法・探索法の開発が望まれている。蛍光指示薬競合置換アッセイ(FIDアッセイ)は、RNA結合性分子を効率的に探索するための代表的な方法である。しかし、蛍光指示薬の結合性情報の不足や構造多様性の欠如により、適用可能なRNAや検出できる化合物に限りがあった。本研究では、①蛍光指示薬とRNA相互作用を大規模に解析し相互作用大規模情報を取得すること、②その情報を用いて標的を選択、③FIDアッセイを行い、RNA結合性低分子を探索すること、④蛍光指示薬の構造多様化を目指し研究を行った。①のRNA結合分子の大規模結合情報データベース作成において、複数のRNA結合分子を化学合成し、我々が確立したプルダウン・マイクロアレイ技術を利用することで、RNAライブラリ(3000構造)に対する結合情報を大規模に解析した。特に、蛍光指示薬として多数の例が報告されている、チアゾールオレンジ(TO)系の化合物においては、その結合情報の妥当性も示すことに成功した。次に得られた大規模情報に基づき、疾患関連pre-miRNAと蛍光指示薬の組み合わせを選択し、実際にFIDアッセイによるpre-miRNA結合性分子のハイスループットスクリーニングを行った。その結果、いくつかのヒット化合物を取得し、さらに用いる蛍光指示薬によってヒット化合物が異なることも見出した。蛍光指示薬の拡張に関する研究も行い、良好な成果が得られた。
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